デイリーアーカイブ Mar 10, 2025
ESR VENTI ESR初の折りたたみEバイクの実力を先行チェック
Eバイクの中でも、車載が簡単にできる折りたたみEバイクは、様々なブランドが用意している。その中でもサイクリングを重視したモデルで有名なのが、ターン ヴェクトロンシリーズとBESV PSF1だ。
ターン ヴェクトロンシリーズとBESV PSF1の2強体制の中、様々なブランドが注目しているのがESR VENTIだ。ESRはディーゼルエンジンなどの自動車用排気ガス浄化装置の研究開発から始まり、様々な大手企業の開発受託を行っているが、その中に自転車の製造も行っている。VENTIはESR初のEバイクだ。
水平基調の車体デザインが特徴のVENTIは、リアキャリア、リング錠、泥除け、前ライト、センタースタンド、サイドスタンドを標準装備しており、他社の折りたたみEバイクと比較すると、至れり尽くせりの内容となっている。フロントキャリアはオプション。
オートバイのようにサイドスタンドとセンタースタンドが両方装備されているのは、通常の駐輪ではサイドスタンド、折りたたみ時に保管やバッテリーの脱着を行う場合はセンタースタンドを使うためだろう。バッテリーは車体内蔵式で340Whクラス。
モーターはバーファンM200。定格出力250W、最大トルク65Nmを発揮する。バーファンは日本法人を閉鎖しているため、ESRは独自で補修用モーターを確保するとのこと。
今回、短時間ながらESR VENTIに試乗することができた。VENTIに搭載されているバーファン M200に関して注意したいのがバーファンはメーカーによってチューニングが違うということ。そのため、同じモーターを搭載していても、乗り味が違うのが一般的だ。そのため、バーファン製モーターを搭載したEバイクを選ぶ際は、バーファンのブランドで選ぶのではなく、どの会社がチューニングを行ったのか重要となる。
ESRチューニングを行ったバーファンM200は、アシスト比を追い込んでおり、やや”線が細い”感覚があるシマノ STEPS E6180(最大トルク60Nm)や、ボッシュ アクティブラインプラス(最大トルク50Nm)と比較してもレベルが高いと感じさせた。
因みに、Eバイク業界は「金とコネクションの殴り合い」なので、金(≒技術力)とコネクションがあれば、スポーツ自転車ではマイナーな企業でも、Eバイクではトップクラスの車体を作ることができる。
例えば、シナネンサイクルは、Midiaグループに入ったMotinovaモーターを搭載したEバイクを製作している。少し乗ってみたことがあるが、日本ではマイナーブランドのモーターながら、ほぼ無音クラスの音質に、ボッシュ・アクティブラインプラス、シマノ・STEPS E6180よりもパワフルなモーターを選び抜いたこと、法規ギリギリまでのチューニングを実施しており、レベルの高さを実感した。担当者も世界のEバイク事情に非常に詳しく、相当高い見識を持っている。ライバル企業なら要注意企業に認定しているだろう。
ESR VENTIの乗り味に関しては、太いタイヤと安定性を重視した車体などにより重圧感を感じさせる。恐らく乗り味で一番近いモデルはターン ヴェクトロンシリーズだろう。欠点は車体重量。様々な部品をフル装備することで、車体重量は想定22キロと重い。そのため、平地を時速24キロで走るのは厳しく、時速20キロから22キロ程度で走るのがベストだ。
ESR VENTIのライバルに関しては、最初に思い浮かべる人が多いのがダホンインターナショナルのK-ONE、ダホンのFu-COM。このモデルは、車体価格が20万円台前半と安く、必要十分のパワーを持つインホイールモーターなどを採用しており、ESR VENTIの直接的なライバルではない。ダホンインターナショナル UNIOはやや軽い車体によりスポーティな走行感を楽しむ人向けで、同じく直接的なライバルではない。BESV PSF1は特徴的なデザインやリアサスペンションなどの個性があり直接的なライバルではないだろう。
https://youtu.be/5ZBxyMWkqeo
ESR VENTIの直接的なライバルは、ターンのヴェクトロンシリーズだろう。車体価格や標準装備の豊富さに関してはESR VENTIが有利だ。一方で、ヴェクトロンシリーズは、ボッシュモーターを装着し、ボッシュグループに入ることで、多機能ボッシュ製ディスプレイや大容量化が可能になるボッシュ製バッテリーを装着できる利点がある。また、ヴェクトロンシリーズは下位モデルでも油圧ディスクブレーキやシュワルベ製タイヤを標準装備し、上位モデルではハンドル位置をワンタッチで調節できるステム、サドル高を幅広く調節できる2段階タイプのシートポストを採用しており、価格の違いを実感することができるだろう。
VENTIはESR初のEバイクだが、初めてのEバイクとは感じさせない高い完成度を持っていると感じた。発売前にライバル企業が注視しており、とあるライバル企業が試乗会で視察して車体を徹底的に調査していたという噂もあるが、その理由も納得だろう。ESR VENTIは2023年発売予定。予想価格は20万円台後半。
関連リンク
折り畳み自転車 | ESRバイシクル | 日本メーカー (esr-bicycle.jp)
キャノンデール、小径Eバイク「コンパクトネオ」登場
キャノンデール・ジャパン株式会社は、小径Eバイク「コンパクトネオ」を1月27日に発売します。
コンパクトネオは、キャノンデールの名車「デルタV」や「フーリガン」などのデザインをオマージュしたアルミフレームを採用し、内蔵されたバッテリー、取り回しの良い20インチホイールが特徴です。重量は18kgを切り、折りたたみ可能なハンドルバーとペダルにより、家の中に入れることができる設計がされています。また、Lemansの前後ライト、前後フェンダー、25kgの耐荷重を持つラックを装備し、街乗りも重視。
250Whのバッテリーは、3時間30分でフル充電が可能。リアハブに搭載したハイエナドライブシステムと組み合わせることで、3つのアシストモードと最大走行距離60kmを実現します。また、ホイールセンサーを搭載しており、アプリと連動して距離や速度、走行軌跡を記録できるほか、メンテナンスサービスのリマインダーやユーザー登録も可能です。
スペックは、SmartForm C2 Alloyフレーム、Samox 48Tクランク、Hyena MRC-250、250Wドライブユニット、Hyena 250Whバッテリー、Tektro HD-R280油圧ディスクブレーキ(160/160mmローター)、microSHIFT M26S、8速リアディレイラー、キャノンデール クルーズコントロールライザーハンドルバー(15°バック、740mm)、キャノンデール4、6061合金シートポスト(31.6 x 540mm)、ケンダKラッド、20 x 2.35 タイヤが採用されています。付属品は、キャノンデールホイールセンサー、ハーマンのフロントライトとリアライト、ラック、フェンダーなどです。Compact Neoは、カラーがチョーク(CHK)とスモークブラック(SBK)の2色で、価格は29万円(税込)です。
関連リンク
キャノンデール | Cannondale Bikes – Creating the Perfect Ride
オートバイ風Eバイク「スーパー73」にアシスト比率違反疑惑 今後はどうなるか
SNS上でオートバイ風Eバイク「スーパー73」のアシスト比率の違反の疑いが話題となっている。
チェーンがなくても走りました。
これでも公式は「法律で認められた電動アシスト付自転車」だそうですよ!! pic.twitter.com/KxhKHjZW08
— ちいさな自転車家@1月の臨時休業は展示会参戦のため1/24(火)~1/26(木)となります。 (@c_jitensyaya) January 21, 2023
日本国内での道路交通法上の電動アシスト自転車のアシスト比率の基準は、人がペダルを踏む力とモーターによる補助力の比(アシスト比率)が走行速度時速10km未満では最大で1:2で、時速10km以上時速24km未満では走行速度が上がるほどアシスト比率が徐々に減少し、時速24km以上では補助力が0
にならないといけない。(道路交道路交通法施行規則 第1条の3第1項 人の力を補うため原動機を用いる自転車の基準)。そのため、日本国内法に合致した電動アシスト自転車を作る場合は、踏力を測定するために必然的にトルクセンサーを搭載する必要がある。
1990年代に登場した初期の電動アシスト自転車にも機械式ながらトルクセンサーが使われていた。ヤマハ発動機の初代PASは遊星歯車機構、スプリング及びポテンショメータを使用し、ホンダ ラクーン(UB01)は、トーションバースプリング及びポテンショメータを組み合わせた機械式トルクセンサーが使われていた。
チェーンがなくても走りました。
これでも公式は「法律で認められた電動アシスト付自転車」だそうですよ!! pic.twitter.com/KxhKHjZW08
— ちいさな自転車家@1月の臨時休業は展示会参戦のため1/24(火)~1/26(木)となります。 (@c_jitensyaya) January 21, 2023
一方で、動画のスーパー73は、クランクにトルクが加わっていない状態で、回しただけでアシストが作動するようになっている。恐らくトルクセンサーではなく、回転だけを感知するケイデンスセンサーのみだと思われる。ケイデンスセンサーだけでは、踏力からアシスト比率を測定することはできないため、日本国内法に合致したEバイクを作ることはできないだろう。
因みに海外ではケイデンスセンサーだけでも問題ない場合が多いが、トルクセンサーが無いケイデンスセンサーのみのEバイクは、安物扱いで評価が低い。これは、ケイデンスセンサーの特性が関係している。ケイデンスセンサーのイメージはオートバイのスロットルに近く、低回転で漕ぐ場合は弱い力でアシストが働き、高回転で漕ぐと強い力でアシストが働くようになっている。
しかし、Eバイクの本質は自転車のため、タイトコーナーなど、低回転でも強大なトルクを活用する場面が多くあり、パワーだけでなく踏力を活かしたトルクの制御が求められる。そのため、海外仕様でもトルクセンサーを装着しているのが一般的だ。
スーパー73のアシスト比率違反疑惑はどうなるのだろうか。一般的には何かしらの処罰が加わるだろう。また、仮に日本国内法規に合うように変更するとしても、センサーなどの様々な部品を変更する必要がある。現在の日本国内法のアシストで、スーパー73のように車体が小さくて膝が大きく曲がった乗車姿勢で快適に走ることはできない。
アシスト比率違反疑惑に関しては、2022年時点でEバイクの製造や輸入を行う業界関係者の間では有名な話として知られている。今回の動画でアシスト比率違反疑惑は決定的となり、既に様々な企業に拡散されている。この件に関して、某自転車ブランド営業担当は「真っ当な自転車店なら完全に出入り禁止となる」と語っていた。
既に、日本国内法の電動アシスト自転車に合致したオートバイ風Eバイクは、ロカフレーム、マイケルブラスト、ブロンクスバギーなど様々なブランドがある。しかも、これらモデルは真っ当な自転車店で購入することができ、スーパー73よりも価格も安いのに、質感が高く、車体も大きいため迫力がある。
https://youtu.be/Bk3yPW1lwhc
日本国内法のアシスト比率では、車体が小さすぎてきちんと漕げないスーパー73を選んだ時点で乗り物のセンスが無いと言えるが、スーパー73を選ばず、車体重量は25キロと軽量で、80万円超えのE-MTBにも使われているボッシュ パフォーマンスラインCXを搭載し、本国ではサドル高を調節できるアダプターがあるラフサイクルズのリルバディを選んでおけばこうはならなかったが、時既に遅しだ。
業界関係者からすれば、あのHonBikeと同レベルの存在と言えるほどになったスーパー73。将来性に関しては非常に期待できないだろう。