椿本チエインは「長期ビジョン2030」の一環として、Linked Automationテクノロジーを活用し、社会に貢献するモノづくり企業を目指している。このビジョンは、①人にやさしい社会の実現、②安心・安全な生活基盤の構築、③地球にやさしい社会の創造という三つの主要な社会課題の解決に取り組むことを目指しているとのこと。
このビジョンの具体化に向け、同社は従来のBtoB事業にとどまらず、新たな商品や事業の開発に力を入れている。その一環として開発されたのが、電動アシストカーゴ自転車「La si Que」だ。
「La si Que」の特長としては、スタイリッシュなデザインと後輪が二つある三輪車構造を両立した所だろう。従来の後ろ2輪タイプの3輪自転車は、曲線的で高齢者が乗るようなデザインが主流だが、La si Queは直線的でスポーティなデザインを実現。
デザイン面では、折りたたみ電動バイク「タタメルバイク」を手掛けた株式会社ICOMAの協力を得て、乗り続けたくなるスタイリッシュなデザインを実現し、観光、レジャー、ビジネスなど様々なシーンで活用可能なのを売りにしており、老若男女似合うようなデザインとなっている。そのため、従来の3輪自転車では難しい、観光地での買い物体験を豊かにし、遠くの人気店へも足を運べるようにサポートするだけでなく、レジャーシーンでは自然の中でのサイクリングや、遠出してのリフレッシュを支援。ビジネスシーンでは、重い荷物の運搬負担を軽減し、業務効率を向上させると謳う。
後輪部分は独自のスイング機構を採用しているのが大きな特徴だ。
一般的な3輪自転車のスイング機構は車体前半部分を倒れる構造を採用している。これは、コストを落としつつ2輪自転車らしい走行感覚を求めるためだが、後ろ2輪はサスペンション無しのリジッド仕様なので、ちょっとした路面のうねりや段差でも車体が反応するので、従来の2輪自転車の感覚では運転できないという欠点がある。
一方で、La si Queの場合は、後輪にサスペンションを装備して車体が倒れるようになっている。この方式は複雑で高価になるが、サスペンションが装備されているので、路面のうねりがあっても安心して走ることが期待できる。
実際、La si Queの担当者の話を聞いた限りでは、テスト走行で通常の2輪自転車と同等の速度で走行してテストを行っているようだ。一般的なスイング機構を採用した3輪自転車は構造上の関係でスピードを出しすぎに注意する必要があるので、走行性能はLa si Queのほうが高いだろう。
La si Queの荷台は低重心デザインを採用しており、荷物の載せ降ろしがしやすいことに加えて、安定性も高いのを売りにしている。実際、Bicycle e-Mobility City EXPO2024で展示されていた時、高さ方向を活かして清掃用具を搭載したコンセプトを展示しており、スーパーカブ以上の荷物を積むことが可能だ。
La si Queの課題の一つがイメージ戦略だろう。このような三輪電動アシスト自転車は、高齢者向けのイメージが大きいので、購買層が限られる可能性があるので、レジャー領域での活用の提案を行うべきだろう。例えば軽トラックと言えば農家や配送業者が活用する乗り物というイメージが一般的だが、今はオフロード風にカスタムを行ったり、荷台にケージを装着してカスタムする個人ユーザーも少なくない。La si Queも、そのような潜在顧客を取りに行く必要があるだろう。