5月12日から13日に開催されていたBICYCLE-E·MOBILITY CITY EXPO 2023。オリジン社のブースではタタメルバイクと、タタメルバイクを格納・出庫するだけでなく、太陽電池パネルやEVから充電できるハコベルコンテナと一緒に展示されていた。
タタメルバイクは、スーツケースサイズにまで折りたたむことが可能な電動バイク。かつてトランスフォーマーの海外事業を担当したタカラトミーの元社員、生駒崇光が代表取締役の会社「ICOMA」が開発しており、そのコンパクトな形状と変形する機能性は、様々なメディアから変形玩具からの影響を色濃く反映していると言われている。
四角くコンパクトなボディが特徴であるタタメルバイクは、机の下や車の荷室などにも収納が可能なだけでなく、ユーザーの好みに応じてサイドパネルのデザインをカスタマイズすることも可能。2023年のCES(Consumer Electronics Show)では、「CES 2023 イノベーションアワード」を受賞しており、様々な所で注目されている。
タタメルバイクは、カッコや収納機構だけで注目されておりカッコだけに見えるかもしれないが、見えない部分にも拘っている。
まず、製造を行う際は金型を不要とする設計となっているとのこと。タタメルバイクの初期モデルは、大規模な工場に製造を行わず、ICOMA内で製造を行う。金型を不要にすることで、金型分のコストを削減するだけでなく、大規模な生産設備をせずとも生産を行うことが可能だ。これにより、小規模ロットでも製造することができるだけでなく、地場企業で生産を行うことができ雇用促進などの効果が生むことができる可能性がある。
タタメルバイクはデザインを重視している印象があるが、各部品を見ればわかる通り堅実な設計となっている。取材を行うと安全性は非常に注意しており、バッテリーは発火の危険性が少ないリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用予定と語っていた。車体もフレームは一般的なスチール製で、ホイールやフロントサスペンションも既存の50CCスクーターを採用している。
タタメルバイクの車体重量は57キロと、持ち運ぶには厳しい大きさだが、これもそれなりの走行速度が求められる原付一種規格のため、安全性を重視しているのもある。軽量化を求める声は多く聞かれるが、運動エネルギーは速度の二乗に比例するのを考えると、恐らくこれ以上の軽量化は難しい。ICOMAは、将来的に最高速度20キロの特定原付仕様の開発も考えているらしいが、特定原付仕様なら走行速度を抑えることができるため、軽量化も容易だろう。
タタメルバイクはデザインや折りたたみ機構が注目されているが、それに加えて製造や安全を考えており、破綻がない堅実な設計を見ると、スタートアップ系モビリティメーカーとしてはレベルが高いと言えるだろう。ICOMAは椿本チエイン・多目的e-Cargoコンセプトの試作車も開発しているが、従来の電動アシスト3輪自転車をカッコよくしただけでなく、欠点を潰した所を見ると、今後が期待できるスタートアップ系モビリティメーカーの1つと言えるだろう。
文:松本健多朗
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