Specialized Turbo Vado SLを購入して1年が過ぎた。コロナ禍のため、長距離サイクリングを頻繁に行うことは非常に難しい中、走行距離は5700キロを超えている。今回はメインバイクをE-Bikeに乗り換えて、心境がどのように変化したのか紹介しよう。
サイクリングはE-Bikeがメインになり、人力自転車に乗らなくなった
E-Bikeをメインバイクにして、真っ先に変わったのが、サイクリングを行う際は、全てがE-Bikeがメインになり、人力自転車に乗らなくなった事。実際、Vado SLを購入して、人力自転車で40キロ以上を走行する事は殆ど無くなった。
なぜ、このような状況になったのかと言うと、E-Bikeでサイクリングを行ったほうが非常に自由度が高いため。一般的なサイクリングでは、ルートを決めて走行している場合でも、気になる道に行くことは少なくない。ただ、人力自転車の場合、気になる道を行こうとしても途中に上り坂などがあり、躊躇してしまうため、最終的には予め決まった道を走るのが多くなる。
しかし、E-Bikeの場合は、電池とモーターパワーにより走る自由度が非常に大きくなる。気になる道を走っていると途中に上り坂やダートがあっても躊躇せずに走る事がある。また、気軽に峠に入っていき、荷物を出さないでサイクリングを行ったり、途中でUターンを行うのも厭わなくなった。
このようにE-Bikeでしかできないサイクリングを行っていくと、人力自転車のサイクリングの自由度が無く、非常に窮屈に感じてしまい、いつもE-Bikeでサイクリングを行うようになる。この自由度を知ると、所有している全部の自転車をE-Bikeにしたくなるほどだ。
Specialized Turbo Vado SLを購入して良かったか
Specialized Turbo Vado SL(2021年モデル)の価格は、36万3000円(税込)。一般的なクロスバイクや電動アシスト自転車と比較して高価だが、E-Bikeの自由度の高さを活かしたサイクリング遊びを行うのなら買う価値はあるだろう。
Turbo Vado SLの一番の特徴が、車体重量が軽いということ。最軽量モデルは約15キロとE-Bikeの中では軽く、押し歩きでの移動や時速24キロを超えてから人力で速度を出す時などは、一般的なパワフルなE-Bikeよりも快適に行うことが可能だ。
また、Specialized製E-Bikeの特徴であるスマートフォンアプリ「MISSION CONTROL」も便利だ。アシストのパワーとサポートを調整することで、楽に走るように設定できるだけでなく、アシストを落として航続距離重視にセッティングを行ったり、アシストの味付けを変えることができる。また、ライドを行った際、ルート、速度、距離、ライダーの出力、時間、バッテリー消費量を記録を行うため、今まで走行した場所を思い返したり、バッテリー消費量を見て、ロングライドの改善点を考えることも楽しい。
その気になれば輪行も可能だ。また、他のE-Bikeでも可能だが、車輪を外して通常のスポーツ自転車のように箱に入れて輸送を行ったり、ヤマトホームコンビニエンスのらくらく家財宅急便を使い、そのままの状態で輸送できるのも嬉しいところ。E-Bikeは125CCオートバイと価格帯が変わらないが、オートバイは、箱に入れたり、らくらく家財宅急便を使い、送ることはできない。
Turbo Vado SLと同価格の人力タイプのロードバイクやグラベルロードを購入することも可能だが、これら、人力タイプのロードバイクやグラベルロードを購入しても、クルマやオートバイの感覚で峠道やダートに入れたり、沢山の荷物を積んでも躊躇することなく走れるのは難しい。このようなサイクリングを知ってしまうと、人力のロードバイクやグラベルロードをサイクリング用のメインバイクにするのは厳しいと感じるようになる。
Specialized Turbo Vado SLの不満点
筆者のメインバイクとして大活躍しているSpecialized Turbo Vado SLだが、不満点もある。1つ目が、軽量化を重視したためにバッテリーは脱着不可で容量も320Whと少ない事。バッテリーを脱着不可にすることで、フレームに穴を開けないため補強を少なくてすむ、バッテリーマウントに脱着機能を搭載しなくても良いため軽量化につながるという利点があるが、それでも、充電場所の選択が難しいのは否めないところだ。
バッテリー容量が320Whなのも、本格的なロングライドを行うには少ない。平地中心のサイクリングならまだ良いが、峠越えを楽々と楽しむにはバッテリー容量はゆとりが無い。160Whの補助バッテリー(レンジエクステンダー)の購入を考える必要があるだろう。
Turbo Vado SLに搭載されているモーター「Specialized SL1.1」のパワー・トルクが少ないのも気になる所。Specialized SL1.1のスペックは定格出力240W、最大出力240W、最大トルク35Nm。一般的なE-MTB用モーターは定格出力250W、最大出力500W、最大トルク80Nmクラス。Specialized SL1.1のモーターは一般的なE-MTB用モーターと比較して最大出力、最大トルクが半分以下なので、パワフルだとは感じない。
日本国内では、軽量E-Bikeを展開しているE-BikeがSpecializedだけなので、ライバル不在の状況が続いているが、海外ではシマノ・EP8 RSを搭載したOrbea RISE(記事)、BH 2EXMAGシリーズを搭載したBH iLYNX(記事)などが登場している。これらのライバルは、Specialized Turbo SLシリーズよりも、力強いモーターを搭載しつつ、車体重量は軽く、さらにバッテリー容量を増やしている。
例えば、BHのE-ロードバイク「Core」は、最大トルク65NmのBH 2EXMAGモーターを搭載。バッテリーは内蔵540Whに、180Whの追加バッテリーで720Whの運用が可能。最軽量モデルであるカーボンフレームのロードバイク仕様は12.6キロと非常に軽量だ。軽量E-Bikeの強力なライバルが続々と登場している中、Specializedは早急なビッグマイナーチェンジやプログラムアップデートを行うべきだろう。
文:松本健多朗
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