モーターを動力にした電気自動車などのE-モビリティは様々な企業が新規参入を行っている。E-Bikeに関しても、従来の自転車関連企業だけでなく、自動車部品を製造する企業などの異業種が参入している。
有名なのが、自動車用部品の製造を行うBoschやBrose等があるが、義手・義足などの医療技術分野向けドライブシステムを製造するMaxon、フランスに本拠を置く自動車部品メーカーのValeoなどがE-Bikeの参入を発表している。日本企業でもモーターにおける世界シェアが1位で有名な日本電産も参入を予定している。
日本電産製E-Bike用ドライブユニットは、エンビジョンが開発を行っている3輪スポーツカーゴE-Bike「STREEK ACTIVE CARGO TRIKE」(記事)に、Nidec 41Rを搭載する予定。Nidec 41Rは、36V電圧で定格出力250W、最大出力不明、最大トルク95Nmを発揮する。センサー関連はトルク, ケイデンス, 角度, スピードの4つのセンサーを搭載。他にもブレーキカットオフや、ウォークアシストなどを搭載している。
日本電産はNidec 41Rだけでなく、Nidec 51RというE-Bike用ドライブユニットも用意している。スペックは、36V電圧で定格出力250W、最大トルク90Nmを発揮。センサー関連はNidec 41Rと同じく、トルク、ケイデンス、 角度、スピードの4つのセンサーに、ブレーキカットオフや、ウォークアシストなどを搭載している。
世界的に情報が殆どないNidec 51Rだが、今回、あえてピックアップしたのはモーターのサイズが非常に小さいのに、最大トルク90Nmを実現している事。Nidec 51Rのサイズは185x96x134ミリ。数値を見ただけではピンとこない人も多いが、この大きさは、パワーやトルクを犠牲にしてモーターを小さくした軽量系E-Bike用ドライブユニットと同クラスの大きさだ。
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参考として、アンドラのE-Bikeブランド「Forestal」が搭載しているE-Bike用ドライブユニット「Eon Drive」のサイズは165x105x147ミリで、定格出力250W、最大トルク60Nm。Nidec 51RはEon Driveよりも30Nmトルクが強い90Nmのトルクを発揮する。
Nidec 51Rのライバルは、YAMAHA PW-X3(記事)、Shimano EP8(記事)、Bosch Performance Line CX(記事)など、従来の高出力、高トルクを重視したE-Bike用ドライブユニットも入るが、これらライバルのモーターサイズはNidec 51Rよりも大きい。クランク軸の厚みを見ればNidec 51Rがいかに小さいかがわかるだろう。
モーターをコンパクトにすると、ロードクリアランスの向上、車体重量の削減、車体設計が容易になるので、各社がパワフル、高トルクを重視つつ、モーターをコンパクトにするのか競っているが、このジャンルに関しては、世界的に見ても執筆時点(2021年12月19日)では、日本電産が一歩先を行っている。モーター重量は2.9キロで、この部分に関しては、軽量E-Bikeと比較して1キロほど重い。ただ、Orbea RISE(記事)のように、従来の高出力、高トルクを重視したE-Bike用ドライブユニットをベースにしつつ、車体やバッテリーを軽くすることで、軽量化を実現したE-Bikeがあるため、Nidec 51Rで軽量E-Bikeを作れる可能性はあるだろう。
E-Bikeのドライブユニットは、モーターだけでなく、バッテリーの性能、スマートフォンと接続するインフォテイメントシステム、耐久性、サービスネットワークなど、様々な条件が合わさって性能を競うため、モーターのスペックだけで勝負は決まるわけではない。ただ、Nidec 51Rはスペックを見ただけで、非常に期待する内容を持っているのは確かだ。
Nidec 51Rを搭載したE-Bikeや日本導入に関する内容は不明。Nidec 51Rに関する情報が公開されたら随時紹介する。
文:松本健多朗
関連リンク
- 日本電産 https://www.nidec.com/jp/
- 3H(Nidec E-Bike System代理店) https://www.threehhh.com.tw/