鉄道、船、飛行機などの公共交通機関を使用して、自転車を運ぶ「輪行」は、自転車を趣味にしている人にとっては、やった事がある人は少なくないだろう。車体を分解して専用の袋に入れて構内を移動するため体力や腕力が必要だが、公共交通機関で一気にワープすることができるため、行動範囲が大きく広がる。
この輪行を行うのは、電動アシスト自転車やE-Bikeでは難しいと言われているが、ロードバイクタイプのE-Bike「Specialized Turbo Creo SL」(記事)や、クロスバイクタイプの「Specialized Turbo Vado SL」(記事)といった軽量E-Bikeの登場により、一部のE-Bikeで輪行が比較的簡単に行えるようになった。
今回、筆者が所有するSpecialized Turbo Vado SL4.0で鉄道輪行を行ってみた。結論から言うとE-Bikeの輪行は可能だが、従来の人力自転車よりも難しい部分がある。また、輪行しやすいE-Bike、輪行しにくいE-Bikeがある。今回はE-Bike輪行でわかった部分を紹介しよう。
輪行の規定
輪行の規定は、公共交通機関によって細かく別れているが、鉄道に関してはJRの輪行の規定を満たしていれば輪行が可能な事が多い。高速バスに関しては、殆どの会社が輪行不可で、一部の路線でしか輪行できない。飛行機輪行に関しては、後で述べるリチウムイオン電池の問題により、輪行は非常に難しいのが実情だ。
JRの輪行ルールは以下の通り
- 携帯可能な荷物で、縦・横・高さの合計が250センチ(長さは2メ-トルまで)以内
- 重さが30キロ以内
- サイクリングやスポーツ大会などに使用する自転車は、解体して専用の袋に収納したもの、または折たたみ式自転車で折りたたんで専用の袋に収納したもの
- 最大2個まで持ち込むことが可能。(ただし、傘、つえ、ハンドバックなど身の回り品は個数に数えません。)
輪行が簡単なE-Bike、輪行が難しいE-Bike
数あるE-Bikeの中でも輪行が簡単なE-Bike、輪行が難しいE-Bikeがある。輪行が簡単なE-Bikeの特徴は、車体が軽くて重量バランスが良い、車輪が前後とも外すことができるのが絶対条件だ。輪行が比較的簡単なE-Bikeは以下の通りだ(強調しているのは筆者お薦めモデル)
- Specialized Turbo Creo SL/Creo SL Evoシリーズ
- Specialized Turbo Vado SLシリーズ(Vado SL EQシリーズは荷台や泥除けがあるため除外)
- 一般的な定格出力250WのクロスバイクタイプのE-Bike、リジッドフォークを採用し泥除けや荷台が無いモデル
- TRANS MOBILLY NEXTシリーズ
輪行しやすいE-Bikeで真っ先に挙げるとすればロードバイクタイプの 「Specialized Turbo Creo SL」(記事)や、クロスバイクタイプの「Specialized Turbo Vado SL」(記事)だ。このモデルは軽量なSpecialized製ドライブユニット「Specialized SL1.1」を搭載しており、車体重量が軽く、人力自転車にほぼ近い車体バランスを実現している。車体重量はSpecialized Turbo Vado SL 4.0で推定15キロ。
一般的な定格出力250WのクロスバイクタイプのE-Bikeの場合、車体重量は18キロから20キロが多い。例えば、ミヤタ・クルーズシリーズの場合、車体重量は18.5~7キログラムとなる。しかし、これらのE-Bikeはバッテリーを外すことができるモデルが多いため、輪行を行う際はバッテリーを外せば、ある程度、車体が軽くなる。
バッテリー「BT-E6010」の重量は2.65kgのため、バッテリーを外した場合のミヤタクルーズの車体重量は約16kg。重いバッテリーをバッグパックに入れるなど、輪行袋に入った自転車の重さを軽くするなどの工夫を行えば、車体が重いため誰でも輪行を楽しめるわけではないが、輪行は不可能なわけではないようだ。
電動アシスト自転車やE-Bikeには、折りたたみ自転車タイプがある。折りたたみ自転車の場合、車体がコンパクトに折り畳めるため、車載には便利だが、多くのモデルでは重量が重いため、人力タイプの折りたたみ自転車と比較して輪行は気軽にできない。折りたたみ自転車タイプの電動アシスト自転車やE-Bikeで頻繁に輪行を行うのなら、軽量タイプのモデルを選ぶのが良い。
ルノーライトシリーズで有名なGicの電動アシスト自転車ブランド「TRANS MOBILLY」には、軽量な折りたたみ自転車タイプがある。その中でも、持ち運びに特化したTRANS MOBILLY NEXT 140は、14インチホイールを採用したモデル。
TRANS MOBILLY NEXT 163は、16インチホイールと外装3段変速を採用したモデル。変速機を採用することで、14インチモデルよりも走行性能を重視している。
逆に輪行が難しいE-Bikeは頑丈な車体を採用したE-MTBや、キャリアや泥除けを装着したトレッキングタイプは輪行は難しい。このタイプは、カーサイクリングやサイクルトレイン、ヤマト運輸のらくらく家財宅急便などを使うのをお薦めする。
E-Bikeで輪行を行う際に注意する事
輪行可能なE-Bikeで輪行を行う場合、いくつかの注意点がある。輪行には鉄道輪行、フェリー輪行、バス輪行、飛行機輪行がある。この中でE-Bikeでの輪行に不向きなのはバス輪行と飛行機輪行だ。
バス輪行は実施している会社が少なく、輪行を行う際、バスにあるトランクスペースの関係で、車体を横倒しにする必要があり、精密機器が入っているE-Bikeを壊す可能性が高いため、筆者はお薦めしない。
飛行機輪行の場合、リチウム電池やリチウムイオン電池は機内持ち込みに制限があるのに注意。リチウムイオン電池の場合、160Whを超える物に関しては貨物室の預かりや機内持ち込みは不可能となる。
現在のE-Bikeはバッテリーの大容量化がブームになっているため、飛行機輪行が可能なE-Bikeは非常に少ない。現時点では、ヤマハ・YPJ-R/YPJ-C(25.2V×2.4Ah=60.48Wh)や、トランスモバイリーNEXT(24V×2.8Ah=67.2Wh)ぐらいだ。また、Specialized Turbo SLシリーズは、車体からバッテリーを外し、オプションで用意されているレンジエクステンダー(160Wh)を使うことで飛行機輪行ができるようになっている。
【国内・国際線】リチウム電池(リチウムイオン電池)が内蔵・装着された一般電子機器の取り扱いについて。
:https://contact-jp.ana.co.jp/app/answers/detail/a_id/6174/
また、輪行を行う際に注意したいのが、ディスプレイの保護。輪行を行う場合、車体からディスプレイが出ていると、ちょっとしたことでぶつけて破損する可能性がある。ディスプレイはE-Bikeの重要な部分で、ディスプレイが破損すると電源が入らないモデルがほとんどだ。ディスプレイに関してはシマノ(一部モデルのみ)、ボッシュ(Purionは不可)は外すことができ、BESV、Benelliは外せない。輪行する際、ディスプレイは保護するなど対策を行うのをお薦めする。
Specialized Turbo SLシリーズ(Turbo Creo SL、Turbo Levo SL、Turbo Vado SL)に関しては、ディスプレイはオプションとなっている。また、ディスプレイの接続は配線が必要なく、万が一破損しても車体が動かないという問題は起きないようだ。恐らく、制御関連に関してはトップチューブに内蔵されたTurbo Control Unitが行っているのだろう。輪行での破損しにくいのは大きな利点だ。
輪行袋の選定に関しても注意したい。輪行袋には置き場所がコンパクトな縦置きと、車体が倒れにくい横置きの2つがある。一般的な輪行袋の場合、電車に乗車する際、輪行袋がじゃまになりにくい縦置き式が良いと言われている。
しかし、多くのE-Bikeの場合、モーターがクランク周辺に装着されていることが多い。一般的な定格出力250WのE-Bikeに装着されているモーターの重量は約3キロ。E-Bikeを縦置きにした場合、重心の関係で倒れやすい可能性があるため、横置き式輪行袋のほうが安心感はあるだろう。
因みに、Specialized Turbo Vado SLの場合、モーターの重量が1.95キロと軽く、車体バランスが良いため、縦置き式輪行袋が比較的使用しやすい。
E-Bikeの輪行に関しては、輪行に適した車種を選ぶ、バス輪行や飛行機輪行は不可、輪行を行う場合、ディスプレイは保護する、輪行袋は縦置きより横置きのほうが有利といった様々な課題がある。しかし、Specialized Turbo Creo SLシリーズやTurbo Vado SLシリーズといった輪行しやすいE-Bikeを選べば、不可能ではないのがわかるだろう。
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