E-Bikeの威力を発揮する場所と言えば上り坂だろう。従来の電動アシスト自転車は上り坂を楽に上れる事ができる。しかし、E-Bikeは、電動アシスト自転車ではできない「上り坂を駆け抜ける事」が可能だ。
人力ロードバイクやクロスバイク等、軽いギアに落としてゆっくりと走るような場所では、E-Bikeは人力自転車よりも遥かに速いスピードで駆け抜けてゆく。
人力ロードバイクやクロスバイク等が時速8~9kmで上るような場所では、E-MTB「BESV TRS2 AM」の場合、時速18kmで坂道を駆け抜ける事が可能だ。人力自転車の2倍の速さで坂を駆け抜ける世界は、どんな人力自転車でも見ることができない、本物のE-Bikeだけしか見れない世界だろう。
E-Bikeの「坂を駆け抜ける歓び」を一回味わってしまうと、スピード感や時間の流れ、距離感が大きく変わる。
最初に変わるのはスピード感。上り坂を(息が上がりそうになるが)時速18kmでコンスタントに走れるのを知ると、今までの人力自転車のように「上り坂=ゆっくり走る」という感覚では満足できなくなり、「上り坂=普通に走る」という感覚に変わる。因みに、E-Bikeでも人力自転車のように、上り坂をゆっくり走る事はできるが、視界に流れる景色が遅く感じるため、スピードを上げる事が多い。
2つ目の時間の流れは、E-Bikeは人力自転車よりも時間のゆとりを感じる事。Specialized Turbo SLシリーズ等一部を除き、多くのE-Bikeは重いバッテリーを搭載しているため、平地では人力ロードバイク等では簡単な、常時時速30km超えを行うのは難しい。それでも、E-Bikeのほうが人力自転車よりも時間のゆとりを感じる事ができるのは、どんな時でも一定のスピードが出せるからだ。
人力自転車でタイムを稼ぐような走りを行う場合、平地でスピードを出して上り坂のタイムロスを帳尻合わせするような走りが必要になる。しかし、E-Bikeの場合は、平地は時速23~24kmとソコソコのスピードで走行し、上り坂を時速18~19kmで走ってタイムを稼ぐという技が可能になった。
また、人力ロードバイク等、舗装路を高速走行できる自転車は前傾姿勢で腹部を圧迫するため、体の調子が悪くなると高速走行が難しくなる事がある。E-Bikeの場合、途中で体の調子が悪くなっても、モーターアシストを活用して走行できるため、時間のゆとりを感じるのだろう。
最後の距離感は、スピード感や時間の流れがE-Bikeによって変化し、距離感が短くなったと思えば良い。モーターアシストにより、体調面や上り坂の不安が少なくなり、平均速度の変動が少なくなったため、従来、人力自転車ではカッタルイと感じた時は行くのを躊躇っていた時でも、ちょっと走ってみようという気にさせてくれる。上り坂を人力自転車の2倍の速さで走る「坂を駆け抜ける歓び」を知ると、誰もがやみつきになってしまうだろう。
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文:松本健多朗