世界有数の台湾の自転車会社「MERIDA」は、BAHRAIN MERIDA Pro Cycling Teamに供給するレーシングロードバイクだけでなく、E-Bikeもラインナップしている。日本市場でも他社と比較して数多くのE-Bikeを用意しており、スポーツライド用のフルサスペンションE-MTBから、街乗りからサイクルツーリズムまで対応するE-Bikeをラインナップしている。
今回、紹介するePASSPORT 400EQはShimano STEPS E5080を搭載したトレッキングバイクタイプのE-Bike「E-トレッキングバイク」。スタンドや荷台、泥除け、前後ライトを装着し、街乗りやサイクリングが楽しめるE-Bike。今回、ワイズロード東大和での試乗会で試乗することができたため紹介する。
前後ライトや荷台等、実用性を重視した装備を採用
トレッキングバイクのePASSPORT 400EQは荷台やライト等、実用的な部品を装備している。ライトはフロントフォークとリアキャリアに装着されており、バッテリーでライトのON/OFFが可能だ。
前後泥除けには、マッドフラップが装着されており、車体や靴が汚れにくい効果を持っている。また、車体にはサークルロックも備えており、気軽に鍵をかけることができる。
ラグジュアリーな乗り味が特徴のePASSPORT 400EQ
試乗したePASSPORT 400EQは、フレームサイズが合わなかったため詳しい評価は行わない。今回は、MERIDAの営業担当者がePASSPORT 400EQの売りを「ラグジュアリーな乗り味」だと語っていた事について解説したい。
ePASSPORT 400EQが「ラグジュアリーな乗り味」と言えるのは、3つの理由が挙げられる。
1つ目は乗り心地が良い事。ePASSPORT 400EQには、SR Suntour NEXというクロスバイク用サスペンションフォークを装着。街中の段差でもサスペンションが動いてくれるので、段差の通過であるガツンとした硬い乗り心地が無い。また、タイヤは「Continental Contact Cruiser 622-50」は、29×2.0インチ相当とマウンテンバイク並に太い。タイヤが太いお陰で荒れた舗装路や砂利道でも不安なく走行できるだけでなく、エアボリュームが多いのでラグジュアリー感がある乗り心地を実現した。
2つ目が、ガッチリとした剛性感。フェンダーなどの部品の取り付けから、E-Bike専用タイヤ、本格MTBにも採用されているBOOST規格を採用したスルーアクスルタイプのフロントハブなど、高剛性の部品を装着されている。そのため、振動で部品がブルブルと震える安っぽさ(これは自動車でもよくある)が無く、ガッチリとした乗り心地のお陰で、高い乗り物を運転している感覚になるのだろう。
最後の3つ目が、静かでマイルドにアシストしてくれるドライブユニット。ePASSPORT 400EQに搭載されているドライブユニット「Shimano STEPS E5080」は最大トルク40Nmと、E-MTBで使われているドライブユニット(最大トルク70~90Nm)よりも半分ほどのトルクしかない。しかし、E-Bikeはモーターだけでなく人間の脚力も合わせて走る乗り物で、人間の脚力が最大クランク軸トルク約160Nm(論文 電動アシスト自転車用統合シミュレータの開発から:PDF)とモーターよりも力強い。そのため、普通のサイクリングなら特に問題は無いと感じた。
トルクが少ない一方で、発進はマイルドにアシストを行い、アシスト音もほぼ無音だ(Bosch Active Line Plusと同等)。静かにスーッとアシストしてくれる乗り味はラグジュアリーなイメージに合っており、このE-Bikeにアシスト音が大きいE-MTB用ドライブユニットは似合わないと思った。
ePASSPORT 400EQの一番の欠点はカラーリングと写真。マットグレーとブラックの2トーンカラーは、人を選ばない色だが他社と比較すると地味だ。また、カタログ写真は横から見た構図しかなく、立体的なフレームの形状がわかりにくい。実際に実車を見て触り、運転すると30万円を超える価格は理解できるが、カタログの地味な色と横からだけの写真では30万円を超えるE-Bikeとしては少し高く感じてしまう面がある。
因みに海外サイトでは、上位モデルのePASSPORTシリーズ(海外名eSPRESSO)が用意されている。上位モデルの「eSPRESSO 900 EQ」は、サンドゴールドとブラックの2トーンカラーで、高価なE-Bikeだと感じさせる。筆者の一意見としては、日本仕様はあえてサンドゴールドとブラックの2トーンカラーといった、高級感があるカラーリングを採用すれば、地味なイメージは払拭されるだろう。
MERIDA ePASSPORT 400EQは日本の自転車シーンを変える可能性はあるか
街乗りからサイクリングまで楽しめるトレッキングバイクタイプのE-Bike「E-トレッキングバイク」は、ヨーロッパ市場でよく見るジャンルだが、日本市場では人力タイプのトレッキングバイクも含めて非常にマイナーな存在だ。
ここで気になるのがePASSPORT 400EQの売れ行き。この件に関してMERIDAの営業担当者に伺った所、具体的な販売台数は出さなかったが、来年度の投入を前向きに検討するほど売れていると語っていた。
MERIDA ePASSPORT 400EQが登場したとき、日本でこのようなE-Bikeが売れるのか疑問に思っていたが、売れているという話を聞くと新しいユーザー層を開拓しているのだろう。もしかしたら高性能な自転車≒レース用自転車≒マニアの乗り物という日本の自転車シーンを変える可能性があるかもしれない。今回、適正サイズのモデルに試乗できなかったが、機会があったらB.B,BASEに載せて(参考記事)公道試乗を実施したい。
MERIDA ePASSPORT 400EQのスペック
シマノが新開発したドライブユニット「STEPS E5080」を搭載した、トレッキングバイクタイプのE-Bike。最大40Nmを発生するShimano STEPS E5080は、ほぼ無音で静かなアシストを行い、504Whのインチューブ式の大容量バッテリーで最大航続距離130kmを実現。前後ライトやキャリア、サイドスタンドを標準装備し、日々の移動からツーリングまで、ラグジュアリーで快適な走りが楽しめる。
- フレーム:ePASSPORT LITE II
- フロントフォーク:Suntour NEX E25 Coil 63
- 重量:24.2kg
- ブレーキ:Shimano MT-200油圧式 ディスクブレーキ
- ギア(前):Shimano FC-E5000 w/ CRE50-B 38
- ギア(後):Shimano HG500-10 11-42 10段変速
- フロントホイール:Shimano MT400 100×15 WHF 32 SPH Centerlock+MERIDA COMP TK 20
- リアホイール:Shimano MT400 142×12 WHR 36 SPH Centerlock+MERIDA COMP TK 20
- タイヤ:Continental Contact Cruiser 622-50(29×2.0インチ)
- ドライブユニット:シマノ・STEPS E5080(定格出力 250W、最大トルク40Nm)
- アシスト方式:ミッドドライブ
- バッテリー:シマノ STEPS BT-8035J 36V、14Ah、504Wh
- 充電時間:-
- アシストモード:3段階(ECO/NORMAL/HIGH)
- 航続距離:(130/100/85km)
公式サイト:MERIDA
文:松本健多朗