スペシャライズド・ジャパンは2月4日、フルサスペンションE-MTB「Turbo Levo SL」シリーズを発表した。
Turbo Levo SLシリーズが日本で販売されている他のE-MTBと違うのは、軽量化を追求している事。車体重量はS-Works Levo SLのLargeサイズで17.35kg。CompモデルのLargeサイズは19.4kg。TREKのフルカーボンE-MTB「Rail9.7」が21.8kgなのを考えたら、驚異的な軽さを実現した。
Turbo Levo SLシリーズはその軽さを実現するために、E-Bike界の主流から外れた設計を採用している。現在のE-Bike界の流れは、ドライブユニットの大トルク化、大容量バッテリー化が本流だ。E-Bikeに使われるドライブユニットは、最高出力が規制されているのに対し、最大トルクの規定は無いため、強いトルクで楽にアシストさせるのが主流だ。
因みに、この最大トルクの数値だけを参考にして、E-Bikeを選ぶのは意味がない。例えば、ヤマハのPASユニットは日本経済新聞の記事(2014年)によれば100Nmとのこと。2020年現在、100Nm超えのE-Bikeユニットは日本では量産車に採用しているE-Bikeは無い。数字だけを見ると、100Nmの最大トルクを発揮する電動アシスト自転車は速く走れると思うかもしれないが、実際は50Nmの最大トルクを発揮するE-Bikeのほうが速い。また、最大トルクが同じでも、ドライブユニットのブランドごとに”味”が違うので、最大トルクの数字が同じでも、同じ性能だとは限らない。
電動自転車で欧州攻める ヤマハ発、3度目の正直(日本経済新聞):https://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ0304O_T00C14A7000000/
一般的なE-MTBは70Nm以上の最大トルクを発揮するユニットを搭載している。一例を挙げると、Shimano STEPS E8080は70Nm、Bosch Performance Line CXは75Nm、Yamaha PW-Xは80Nm、Brose Sは90Nmだ。
しかし今回のTurbo Levo SLに搭載されているドライブユニット「Specialized SL1.1」の最大トルクはわずか35Nm。E-ロードバイク「Turbo Creo SL」に搭載されている物と同じで、ドライブユニットの重量はわずか1.95kgと他のドライブユニットと比較して軽い。(Bosch Performance Line CXは2.9kg)
バッテリー容量にも注目だ。Turbo Levo SLシリーズのバッテリー容量は320Wh。E-Bikeは、バッテリー容量=航続距離のため、航続距離を伸ばすために大容量バッテリーを搭載するのが主流。特にE-MTBは上りが多いハードなコースを走るため、一般公道よりも消耗が激しくなる。そのため、E-MTBのバッテリー容量は500Wh(36Vの場合、14Ah以上)クラスがメインだ。大容量バッテリーを搭載すると車体が重くなるだけでなく、重心位置も変わり、カーブを曲がる時は人力自転車のような軽快感は無くなってしまう。
Turbo Levo SLシリーズが320Whと小型バッテリーを搭載したのも、軽量化とハンドリングの向上だろう。航続距離に関する問題は、オプションで160Whのレンジエクステンダーバッテリー(45,000円、重量は1kg)を装着すれば、合計で480Whになるので、航続距離対策も行っている。
バッテリーはフレーム完全内蔵を採用し、充電を行う場合はシートチューブの下にあるポートに差し込む方式だ。一般的なE-MTBの場合、バッテリー脱着可能タイプのフレーム内蔵式を採用している。バッテリー脱着可能な内蔵式バッテリーの場合、フレームに穴が空いてしまうため剛性を高めるために、頑丈なパイプを使用するので重くなる。Turbo Levo SLシリーズはパイプに穴を開けず、車体内にバッテリーを入れるという、実用性を犠牲にしてまで思い切った方法で軽量化を行っている。
E-Bikeの主流である高トルク、大容量バッテリーから背を向け、超軽量フルサスペンションE-MTBになった「Turbo Levo SL」シリーズ。ライトウェイトE-MTBがどこまで受け入れられるか注目だ。
e-MTB Turbo Levo SL(ターボ リーヴォ エスエル)FAQ:https://www.specialized-onlinestore.jp/contents/blog/detail/585