2019年の自転車界では、グラベルロードやディスクブレーキロードバイクが流行したが、一番大きいのがE-Bikeブームだろう。
2019年は、様々な企業がフルサスペンションE-MTBを発売し、BoschやShimanoから新型E-Bike用ユニットが登場するなど、少しづつE-Bikeが注目されている状況だ。
50CCの原付はスポーツモデルは死滅し、スクーター等を含めても17台(ホンダ:10種類、ヤマハ:4種類、スズキ:3種類)しか無く、地方にあるホームセンターの自転車売場みたいに魅力が無いラインナップだ。一方で、E-Bikeは大手4ブランドユニット搭載車(Bosch、Panasonic、Shimano、Yamaha)の場合、50台以上のE-Bikeが登場した。(Yamaha、PanasonicはE-BikeのYPJシリーズやXシリーズのみの集計)ラインナップも、本格的なオフロードコースを走行するフルサスE-MTBから、泥除けや荷台を装着したE-クロスバイク、ビーチクルーザータイプなど、様々なE-Bikeが用意されており、ファッションを重視したい人やスポーツ性を求めたい人にも満足するラインナップだ。クルマやオートバイでは無くなった「新しい時代が胎動している」感覚がE-Bikeにはあるだろう。
僅か数ヶ月で流れが変わる2019年の日本E-Bike界
「新しい時代が胎動する」感覚があるE-Bike。そのため、クルマやオートバイとは違い、僅か数ヶ月で流れが変わってしまう。
一例を挙げるとすれば、フルサスペンションE-MTBだろう。2019年2月に登場したパナソニック・XM-D2(60万円)は、日本国内初のフルサスペンションE-MTBとして注目を浴びた。しかし8月にインチューブバッテリーを採用し低重心化を実現したBESV TRS2 AMが44万5,000円と戦略的低価格で販売され、2019年後半にはカーボンフレームにBosch Performance Line CXを搭載したフルサスE-MTB「Rail9.7」が発表され、1年も経たずに洗練されたE-Bikeが登場した。この流れは当分続くだろう。
E-Bikeの鍵を握るドライブユニット
E-Bikeの性能の中で、重要な物の1つが「電動アシストユニット」。クルマやオートバイで言う「エンジン」に当たる存在だ。
シマノは新たに中級グレードのE6180とエントリーグレードのE5080を投入し、20万円クラスのE-Bikeでシェアを増やそうとする状況だ。
一方でBoschは、2019年後半にBoschからE-MTB用ユニット「Performance Line CX」を登場させる。他の最上級E-Bikeユニットより静音化と、eMTBモードを搭載することで、日本市場ではヤマハ PW-Xを差し置いて、トップに立つE-Bikeユニットを実現。特にヤマハは執筆時点では他社にE-Bikeユニットを供給していない(GIANT SyncDrive SystemはヤマハとGIANTの共同開発モデル)ため、多種多様なメーカーに供給しているBoschのほうが有利だ。
しかし、ライバルも進化している。海外ではヤマハのPW-X2や、パナソニックのGX Ultimateといった新たなE-Bikeユニットが登場している。また、日本では知られていない48V電圧に最大トルク95Nmを叩き出す某E-Bikeユニットを作る某企業も日本市場に参入する噂も聞く。2020年も気が抜けないだろう。
日本の本格的E-Bikeブームはいつやってくるか
「新しい時代が胎動している」感覚がある日本のE-Bike界だが、第1次バイクブームのような本当のブームはやって来ていない状況だ。
その理由は様々あるが、一番の大きな理由は「E-Bike」という乗り物が社会に認知されていない事だろう。E-Bikeを認知させるには、乗って体験するのが一番簡単だが、どうしても限界がある。既存の電動アシスト自転車と比較して、どれほどの違いを打ち出すのか。従来の電動アシスト自転車や50CC原動機付き自転車と比較して、どのようなライフスタイルを提案できるかが鍵だ。