かつてのロードバイクブームで、多くのメディアではレース仕様を推奨するのが殆どだった。一方で、シクロライダーでは、レースではなく、サイクリングやロングライドを楽しむ「公道仕様」を中心に取り上げていた。
2019年現在、その読みは大きく当たり、ロードバイクでは、競技用ロードバイクではなく、砂利道も走行できるグラベルロードバイクがブームになった。それだけでなく、競技用のロードバイクから長距離ライド用のエンデュランスロードまで、太いタイヤを装着し、一般ユーザーでも快適に走行できる軽いギアレシオを採用するなど、より実情にあった自転車や自転車用品が登場した。また、クロスバイクでは、舗装路走行を重視したスピードクロスだけでなく、650Bホイールに太いタイヤを装着したグラベルタイプのクロスバイクが登場しており、綺麗な舗装路だけでなく、街中やグラベルまでマルチに楽しめるようになった。
公道仕様の次はE-Bike
「公道仕様」の次に来るのは「E-Bike」だろう。従来の電動アシスト自転車よりもスポーティに走行できるE-Bikeは、平地では電動アシスト自転車よりも快適に走行でき、上り坂では、パワフルで楽に走行でき、従来のスポーツ自転車では難しかった非自転車層も獲得できる。よくできたE-Bikeはモーターで動くパワードスーツや人工筋肉のような絶妙なアシストで走る独特の面白さがある。このアシストのおかげで、初心者にとっては辛かった長距離サイクリングや楽に楽しむことができ、人力での達成感や小回り性能、安全性といった自転車のサイクリングの楽しさと、安楽なドライブの楽しさを両立することが可能となった。
ヨーロッパのE-Bikeの市場規模は、ドイツ、オランダを中心に全体で213 万台の市場規模がある。E-Bikeブームの火付け役であるドイツでは、新車販売の 4台に1台がE-Bikeで、2018 年は前年比 36%増の 98 万台とのことだ。オランダは41 万台、スイスは11 万台と、E-Bike市場が成長し、北欧や南欧州でも ブームが起きている。
日本のE-Bike市場はこれからだが、ほぼ絶滅した原付きスポーツバイク市場と比較すると活気がある状況だ。自転車界の頂点に立ち、高価でも世界的にマニアや富裕層が購入してくれる。E-Bikeのエントリーモデルは20万円からで、30万円クラスは当たり前、フルサスペンションE-MTBとなると最低価格40万円、最高で80万円近くするモデルある。その一方で、オートバイの底辺に位置し富裕層やマニアが手を出さない50CC原付きスポーツバイクは、高価なモデルは売れないため、世界的に絶滅危惧種に指定されているレベルだ。
日本でも、30万円近くする某大手自転車会社のE-Bikeが1年も立たずに2,000台ほど売れて、さらに増産を行ったという話もある。また、全国各地でE-Bikeのレンタルを行っている所が増えており、サイクルツーリズムではE-Bikeという流れになるだろう。
サイクルツーリズムだけでなく、実用面でもE-Bikeが注目されている。ロードアシスト事業・ホームアシスト事業・パークアシスト事業の現場対応を行う「PREMIER Assist」では、サイクルトレーラーを連結したE-Bikeを使うと発表した。「PREMIER Assist」では大型オートバイを使用した駆けつけサービスを行っているが、誰でも運転でき小回りが効くE-Bikeを使うことでサービス圏拡大を行うとのことだ。既存の人力スポーツ自転車はこれからも残るが、車体単価が高く運転しやすいE-Bikeが支持されて、時代の中心になるだろう。シクロライダーでもE-Bikeに注目しており、力を入れる予定だ。