E-Bikeと言えば、オフロード走行を楽しむE-MTBや楽にサイクリング可能なE-クロスバイク等、スポーツモデルが多い。一方で、従来のE-Bikeには無いファッショナブルなモデルが登場している。
ロードバイクやシクロクロスのフレームを製造している東洋フレームもE-Bikeをラインナップしている。「AEC」と名付けられたE-Bikeの特徴は、E-MTBやE-クロスバイク等とは違うクルーザースタイルだということだ。
フレームはビーチクルーザーとマウンテンバイクをかけ合わせたデザインだ。それだけでなく、オートバイみたいなダブルクレードルフレームにドライブユニットを装着するなど、細かい形にもこだわっている。また、オフロード走行を行えるだけの強度を持っていると語っていた。フロントフォークはKOWA SPINNER AERIS320-15。コンポーネントは変速機からディレイラーまでシマノDEORE M6000が搭載。但し、今回試乗したのはカスタムモデル。写真上のモデルはフロントフォークをRockshox、ギアはXTに換装されていた。
E-スクランブラーという表現が合う東洋フレーム「AEC」
東洋フレーム AECをビーチクルーザータイプのE-bikeだと考えると違和感がある。それは、スポーツサイクルの雰囲気に近い車体設計とドライブユニットにある。乗車姿勢はアメリカンバイクの低く、脚を前に出したタイプではなく、アップライトな一般的な自転車のポジションだ。また、AECに装備されている「SHIMANO STEPS E8080」は、本格的なE-MTBに使われているスポーツタイプ。脚を高回転で回して楽しむためのユニットで、ゆったりとした姿勢で乗るには非常に歯がゆい。
クルーザータイプのE-bikeなら、東洋フレーム AECよりElectra Townie Go!のほうが優秀だ。Townie Go!の起き上がった姿勢と脚を前に出す乗車ポジションと、静かでトルク重視のBosch Activeline Plusユニットがマッチしており、ゆったりとした運転が楽しめる。
ビーチクルーザーとして見るとAECの評価は低いが、クルーザーとしての色眼鏡を外すと別の視点が見えてくる。オフロード走行可能なフレームに、マウンテンバイクの部品が装着でき、スポーツタイプのドライブユニット「SHIMANO STEPS E8080」が搭載されている。これは只のE-ビーチクルーザーではなくて山も走れるファッショナブルで多目的なE-Bikeなのだ。
オートバイで例えるのならスクランブラーだろう。スクランブラーとは、オンロード用オートバイに、車高を上げブロックタイヤ等を装備しダートも走れるオートバイ。日本では、1970年代前半に道路の舗装が進み、大型オートバイとオフロード走行に特化したトレールモデルのヒットに伴い絶滅した。
世界的に絶滅したスクランブラーだが、海外メーカーを中心にスクランブラーが復活しつつある。これは、オンロード・ダート走行が行えるだけでなく、クラシックな雰囲気のイメージがありながら明確なイメージが定まっていないのもある。
好例がドゥカティ・スクランブラー。ダートも走れるオンロードオートバイという意味の「スクランブラー」だけでなく、掛け合わせる「スクランブル」の意味もかけ合わせ、舗装路のスポーツライドも行えるカフェレーサーや、アドベンチャータイプをラインナップした。それだけでなく、スクランブラーブランドのアパレルも用意し、従来のドゥカティとは違うファッショナブルなオートバイとして売り出している。そのため、近年はスクランブラー≒クラシックなデザインのオフロードオートバイという間違った認識(スクランブラー衰退期には国産4社はSL、RT/DT、TR、ハスラーなどのトレールモデルがあった)も生まれている。
AECをE-ビーチクルーザーではなく、スクランブラースタイルと見ると別の評価になる。カスタムしたくなる独特の形状のフレームに、マウンテンバイクのパーツが装着できる設計で改造しやすい。ドライブユニットはShimano STEPS E8080なのでスポーティな走りも可能で、フレームもオフロード走行できるため、林道ぐらいなら楽しめるだろう。
スクランブラースタイルとも言えるE-bikeの東洋フレーム AEC。欠点は価格で450,000円(税抜き)と高価な所。125ccのカスタムオートバイのコンプリートモデルよりも少し安いだけで、カスタムE-Bikeのコンプリートモデルとして認識されるかが課題だろう。