日本のE-MTB界の中で、いち早くシマノ製ドライブユニット「STEPS E8080」を搭載したのが「ミヤタ・リッジランナー」だ。かつてのミヤタのフラグシップマウンテンバイクの名前がE-MTBとして復活。そして2020年モデルでは新たにフルサスペンションタイプも登場する。このページではミヤタ・リッジランナーとヤマハ・YPJ-XCとの比較も交えて紹介する。
ミヤタ・リッジランナーのスペック
- フレーム:RIDGE-RUNNER Alloy Special edition 27.5
- フォーク:SR SUNTOUR SF18 RAIDON34 DS BOOST RCR
- ブレーキ: Shimano DEORE 油圧ディスクブレーキ
- クランク:Shimano STEPS SM-CRE80 w/CG 34T+ FC-E8000CX 170mm
- スプロケット:Shimano CS-HG500-10 11-42T
- ハブ:Shimano DEORE F/15mm E-Thru R/12mm E-Thru
- リム:ALEX MD35 27.5 32H
- タイヤ:KENDA K1184A 27.5 2.8 F/V w/KENDA logo
- ドライブユニット:Shimano STEPS DU-E8080 250W 70Nm
- バッテリー:Shimano STEPS BT-E8010 36V 14Ah
- 航続距離: ECOモード:140km/ノーマルモード:130km/ハイモード:95km
- 税抜価格:369,000円
リッジランナーの2020年モデルについて
RIDGE-RUNNER 8080は、リッジランナーシリーズ初のフルサスペンションE-MTB。ドライブユニットは2019年モデルのRIDGE-RUNNNERと同じくShimano STEPS E8080。
■標準現金販売価格(税抜価格):¥419,800
■サイズ:400(適正身長:160~175cm)/460(適正身長:175~185cm)
・ドライブユニット『E8080』×バッテリー『E8010』
・最大 70Nm の出力を誇る Shimano STEPS E8080 を搭載。
・SR SUNTOUR 製サスペンションを採用し、急勾配の坂にも対応。
・27.5×2.6 サイズのワイドタイヤによるグリップ力と電動アシストで高い登坂性を実現。
・140mm のストロークとハイパワーアシストで本格的なトレイルライドも楽しめる E-MTB モデル
・下り走行時のバイクの取り回しを向上するドロッパーシートポストを採用。
・Shimano 製油圧式ディスクブレーキを採用し、荒れた路面でもしっかりとした制動力を発揮
・Shimano 製サイクルコンピューターは小型のスポーツタイプを採用
RIDGE-RUNNER 6180は、2019年モデルのRIDGE-RUNNNERの後継モデル。ドライブユニットはシマノ・STEPS E6180に変更。価格は税抜32万円を切る価格になった。
ミヤタ・リッジランナーとヤマハ・YPJ-XCを比較する
世界的に、電動アシストマウンテンバイク「E-MTB」が注目されている。荒れたオフロードや急な坂道でも走れるE-MTBは、体力がない人でも楽に走れ、従来のマウンテンバイクコースでは実現できない自由なコースを作ることが可能になった。
日本でもE-MTBは注目されており、様々な試乗会で乗ることもできる。しかし、E-MTBに試乗できる場所は舗装路が多い。オフロード走行を楽しむためのマウンテンバイクで舗装路を走っても本当の良さを体験できないが、これはE-MTBでも同じこと。電気の力で楽に舗装路を走れるE-MTBでも、オフロード走行をしたほうが楽しいのだ。
E-MTBをオフロードで試乗し、複数のモデルを比較できるイベントは少ない。しかし、運がいいことに、御殿場のTRAIL JAMプレイベントでヤマハ・YPJ-XCとミヤタ・リッジランナーの2台のE-MTBに乗ることができた。今回はヤマハ・YPJ-XCとミヤタ・リッジランナーを比較する。
ヤマハ・YPJ-XCについて紹介
ヤマハのE-Bikeブランド「YPJ」シリーズ唯一のE-MTBで、YPJシリーズのフラグシップモデルでもあるYPJ-XC。シルバーに、青・黒のストライプはヤマハのフラグシップオートバイのイメージを連想させるカラーリングだ。ドライブユニットはヤマハ・PW-X。E-MTB用として作られたユニットで、他のヤマハ製ドライブユニット(PW・PW-SE)よりもパワー感があるのが特徴だ。フロントサスペンションはクロスカントリー用マウンテンバイクのROCKSHOX RECON GOLD 120mm。コンポーネントはシマノ・SLX11速で税抜価格350,000円。
ミヤタ・リッジランナーについて紹介
ミヤタ伝統のマウンテンバイクの名前「リッジランナー」がE-MTBで復活した。通常のマウンテンバイクよりも太い27.5×2.8インチセミファットタイヤを採用。手元でサドル高を上下調節できるドロッパーシートポストやサスペンションの可動をON/OFFできるリモートロックアウト機構を装備した。ドライブユニットはシマノ・STEPS E8080。回転重視のE-Bike用ドライブユニットなのが特徴だ。フロントサスペンションはクロスカントリーマウンテンバイク/E-Bike用のSR SUNTOUR SF18 RAIDON34 DS BOOST RCR。コンポーネントはシマノ・Deore10速で税抜価格369,000円。
上り・平地はYPJ-XCが有利
今回、ヤマハ・YPJ-XCとミヤタ・リッジランナーを走らせたコースは「御殿場MTBパーク FUTAGO」。2018年10月14日現在、近日オープンに向けて調整中とのことだ。TRAIL-JAMプレイベントでは、短い周回コースだったが、上り・平地・下りが入ったオールマイティなコースで、一部にはE-MTB専用の急斜面があるルートもあった。
上り・平地に関しては、YPJ-XCのほうが一枚上だ。ヤマハのドライブユニットの特徴は、自然なアシストを重視している所だがYPJ-XCに搭載されているPW-Xユニットも同じだ。YPJ-XCのアシストは、上から順にエクストラパワーモード・ハイモード・スタンダードモード・エコモード・プラスエコモードがある。オフロード走行で使えるのはエクストラパワーモード・ハイモード・スタンダードモードまで。オフロードではエコモード・プラスエコモードは非常にカッタルイ。
一番凄いのはエクストラパワーモードだ。アシストが一気にかかるこのモードは坂道でもガンガン進んでいく。通常のマウンテンバイクで9~10km/hで走る上り坂を、時速17km/hで進むため、このパワーを体感すると通常のマウンテンバイクに戻れなくなるほどだ。
一方、ミヤタ・リッジランナーはYPJ-XCと比較するとトルクが薄いと感じてしまう。体感的にはリッジランナーの最大アシストのHIGHモードはYPJ-XCのSTDモードに近い。また、リッジランナーに搭載されているドライブユニット「STEPS E8080」は、高回転で脚を回すとアシストがかかりやすい。低回転から高回転まで直結する感覚でアシストするYPJ-XCと比べるとどうしても落ちると感じる。但し、御殿場MTBパーク FUTAGOのコースを走った限りでは、登れる場所はYPJ-XCと同じだった。
下りはリッジランナーが有利
上りではYPJ-XCのほうがパワフルに走れて楽しいが、下り坂はリッジランナーが有利だ。手元でサドルの高さ調整ができるドロッパーシートポストを装備しており、下り坂ではサドルの位置を下げて安全に下ることができる。また、リッジランナーはYPJ-XCよりもタイヤ幅が太いセミファットタイヤを装備しており、安定して下ることができる。YPJ-XCはリッジランナーよりも良くできたROCKSHOX製サスペンションを搭載しているが、リッジランナーのほうが安心して下れる。
ただ、リッジランナーやYPJ-XCに限らず、E-BIKEの下りは従来の自転車と比較すると違和感を感じるだろう。筆者の場合は通常の自転車と比べるとコーナーで車体の重さを感じた。それは重いバッテリーをダウンチューブに搭載したため、重心位置の変化等があるだろう。これはE-MTBやE-Bikeで下り坂を走れば一発でわかる。E-MTBやE-Bike系の記事で、この事について書いてあったら信用できる目安になるほどだ。
おそらく、日本国内のE-Bikeで、普通の自転車のようなコーナリングを楽しめるのは、YPJ-RとYPJ-Cぐらいだが、あれは舗装路走行に特化し小型バッテリーにしたのもある。仮にE-MTBに小型バッテリーを搭載し、ハイパワーアシストでオフロード走行したらあっという間に電池切れになるだろう。バッテリー問題は、画期的な技術が開発されて小型化に成功するか、バッテリーのデザインを容易にするか、何かしらの画期的な技術が開発されないと解決しないだろう。
YPJ-XCやミヤタ・リッジランナーを購入する前に乗りたいのがBESV TRS2シリーズだ。ダウンチューブに内蔵したバッテリーは、従来のE-MTBよりも低重心化を実現し、一般的なMTBに近いハンドリングが実現した。一度は試乗するのをお勧めする。
ヤマハ・YPJ-XCとミヤタ・リッジランナーを買うのならどちらが良いか?
ヤマハ・YPJ-XCとミヤタ・リッジランナーのどちらかが良いかと聞かれたら筆者は困る。この質問は、その人の使い方にもよるので一概にYPJ-XCが良いとかミヤタ・リッジランナーが良いとかは言えない。
筆者の好みで言うのならヤマハ・YPJ-XC。PW-Xドライブユニットはパワフルにアシストし、フロントサスペンションもリッジランナーより良く動く。車体サイズも3種類あり価格は税抜35万円と、内容を考えたら高くはない。電動アシスト自転車のリーディングカンパニーとしての意地すら感じるほどだ。しかし、MTB初心者にE-MTBに乗ってもらうのならリッジランナーだろう。ドロッパーシートポストやセミファットタイヤは初心者でもある程度安心して下り坂を下ることができるからだ。
一番良いのはYPJ-XCとリッジランナーの両方を乗りくらべること。サイクルイベントや試乗会でも良いが、筆者としては観光地やMTBパークにレンタサイクルとして置いてもらうのがベストだろう。