躍進しつづけているホンダの軽自動車。最近では、軽商用車「N-VAN」が販売され、人気となっている。この「N-VAN」は、様々なメディアが紹介しており画期的な軽商用車として注目されている。なぜ、注目されているのか解説したい。
出典:https://www.honda.co.jp/N-VAN/webcatalog/type/plusstyle/
軽商用車では珍しい、ボンネット付き軽ワンボックスバン
軽自動車に限らず、一般的な商用バンは運転席の下にエンジンがある。これは室内スペースをを限界まで広げて荷物が積めるので、軽商用車(スズキ・エブリイ等)から大型商用バン(トヨタ・ハイエース)に採用されている。一方、乗用車では前にボンネットがあるミニバンタイプが主流だ。室内スペースは狭くなるが、エンジンの熱や騒音が入りにくく衝突安全性も高いため、主流になった。
N-VANが面白いのは、軽商用車ながら前にエンジンを搭載していること。騒音や熱問題が少ないが、室内スペースが狭くなる欠点もある。特に軽商用車は車体サイズが小さいので、他のワンボックスバンよりも室内が狭い。なぜN-VANが軽ワンボックスバンながら前にエンジンがあるのは、軽乗用ミニバン「N-BOX」を基礎にしたためと言われている。
1by3と割り切った室内設計
室内スペースが狭い欠点を持っているN-VANだが、他の商用バンには無い特徴を持っている。1つ目は助手席側にピラーレス構造にすることで、大きな開口部を採用したこと。助手席ピラーレスを採用したクルマは、ダイハツ・タントやトヨタ・アイシス等があるがこれらは乗用車で、軽商用車ではN-VANが初採用だ。
2つ目は助手席と後席が折り畳めること。運転席以外の座席が折りたためるフラットな荷室ができる。3つ目は、床が低いので乗り降りしやすく室内高が高いこと。N-VANのハイルーフ仕様の荷室高は1365ミリと高く、子供が着替えることもできる。(ちなみにエブリイは、同じハイルーフ仕様で1240ミリ)。この3つの特徴はN-VANの大きな利点だろう。
自転車の積載に関しては簡単だろう。その気になれば1300CCの大型オートバイ(ホンダ・CB1300SuperFour)まで積めるのだ。また、大きな開口部は移動販売車として使うこともできるようだ。
参考:オートックワン ホンダ 新型N-VAN 試乗│誰もが子供の頃に思い描いた夢を実現してくれるクルマ
注意する所は荷室スペースを重視したため助手席や後席の座席は薄い。2by2ならぬ、1by3と言える仕様だ。基本は一人乗り用で他の座席は偶に人を乗せるためのクルマだ。
洒落た仕様もラインナップしているN-VAN
N-VANは通常の商用仕様だけでなく、洒落た「+STYLE」という仕様がある。+STYLEには2種類あり、+STYLE FUNは、ハイルーフと丸目ライトを組み合わせ、キャラクター性を持たせたモデルだ。一方、+STYLE COOLは、屋根が低いロールーフ仕様とメッキグリルを採用。これはN-VANの前車であるバモス・ロールーフ仕様の代替も兼ねているだろう。
N-VANはどのような人に合っているのか?
ミニバンのような商用車が欲しい
荷物は積みたいが、騒音や操縦安定性も求める人はN-VANを見たほうが良いだろう。乗り降りしやすい設計は、他の軽商用バンには無い特徴があるからだ。広い車内と乗用車のような運転性能を求めるアウトドア系ユーザーには合っているだろう。また、ディーラーオプションにマルチボードがあるので車中泊旅を好む人も一見の価値がある。
キャラクター性がある商用車が欲しい人
荷物を沢山積む必要があるが、洒落た商用車が欲しい人は少なくない。そのような人は、ダッジ・ラムバン・シボレーエクスプレスなどアメリカンフルサイズバンや、軽ワンボックスのカスタム仕様(ワーゲンバス仕様等)や軽ウォークスルーバンなど、キャラクター性があるバンを好む。しかし、これらのバンには欠点がある。アメリカンフルサイズバンはアメリカ専売のバンで、車体が大きくて値段も高いさらに並行輸入でしか買えないのでアフターサービスに不安がある。軽ワンボックスのカスタム仕様も高価で、アフターマーケットのパーツを使い作られているので、こちらも不安がある。軽ウォークスルーバンは、1998年の軽自動車規格改定時に生産中止(ダイハツ・ミラ)し、一番新しい車でも20年前の車なので、安全性能や部品供給などを考えるとだれでも気軽に楽しめる車とは言えない。
N-VANの場合、+STYLEを選んだり、ディーラーオプションの外装パーツを装着すれば、キャラクター性があるバンを作ることができる。車体価格も比較的低価格で、維持費も軽自動車なので安い。
サイクリストにN-VANは合っているか?
自転車を趣味にする人は、室内が広いミニバンやワンボックスカーを好む傾向にある。大型オートバイが積めるほど広いN-VANは、車体が大きいマウンテンバイクなど、簡単に積めるだろう。雪道を走る人向けの4WD車や、マニュアル車が好きな人向けの6MT仕様、パワーが欲しい人向けのターボエンジン仕様があるので、幅広い要求に答えることができる。
欠点は、助手席や後席は折りたたみを前提とした薄い座席なので、人を頻繁に乗せるのは辛い。また、後席を畳まず荷室を重視する人は、従来の軽ワンボックス車のほうが向いている。
独創的な軽バンとして注目されているN-VAN。発売から8月20日までの累計受注台数が、販売計画(月3,000台)の約4.6倍以上となる14,000台を超えたと、発表するほど人気だが、その理由もわかるだろう。