近年、スポーツ自転車や電動アシスト自転車がインフレにより高額化している。そのため、値下げを行うことで、販売数を増やす施策を行っているブランドが多い。ただ、近年のインフレ状況を見ると、値下げは一時的な傾向で、最終的には値上げされるだろう。
値下げが難しい状態で、今後、売れ行きを上げる方法で注目されるのがリセール価値を上げることだろう。
リセール価値とは、特定の商品や資産が再び市場に出されたときに得られる価格のことを指す。この概念は高価な物品や長期間使用される製品において重要で、リセール価値が高い商品は、購入後に高額で再販できるため、実質的なコストを低く抑えることができる。
まず、リセール価値が重要な理由として、投資回収の観点が挙げられる。購入時に高額な支出を伴う商品、例えば車や高級腕時計などは、将来的に売却することで購入費用の一部を回収できる可能性がある。もちろん、リセール価値が高ければ、その回収額も大きくなる。また、リセール価値の高い商品を所有することで、急な資金需要が発生した場合に迅速に資金化できるため、経済的な安定性を保つことができるという期待を持つことができる。
特に、高級車などの高額商品の価値の一つはリセール価値が大きい。自動車業界がリセールに力を入れている理由は、いくつかの重要な要因がある。自動車を購入する際、多くの消費者は将来的に車を売却することを考慮に入れる。これは、自動車の価格が高額なため、万が一売却する場合もあるため。そのため、高いリセール価値が保証されている車は、消費者にとって魅力的だ。リセール価値の高さは、メーカーやディーラーに対する信頼の現れでもあり、ブランドの品質や信頼性の証と見なされるのが一般的だ。
また、リセール価値が高い車を提供することで、消費者は再度同じブランドの車を購入する可能性が高くなる。車の下取り価格が高ければ、次の車の購入時に有利な条件で取引ができるため、顧客のリピート率が向上する。そして、自動車メーカーやディーラーは、リースプログラムや残価設定ローンを通じて車を提供することが多い。そのため、リース終了後に車を再販する際、高いリセール価値があると利益を得やすくなる。
自動車の残価設定ローンの成功により、TREKやSpecializedが残価設定ローンを提供する事例がある。このようなローンは高価なロードバイクでも適用されるが、ロードバイクには相性が悪い。その理由はいくつかある。
まず、ロードバイクは商品の価値の減少が早いということ。ロードバイクは自動車などの耐久消費財ではなく、スポーツ用品に入る。
スポーツ用品は、使用頻度や使用環境によって価値の減少が早い傾向があり、自転車に限らずスキー用品、サーフボードなどは、頻繁に使用することで摩耗や損傷が生じ、リセール価値が急速に下がる。このため、残価設定ローンのような将来的な残価を見込むローンには不向きだ。
また、市場の需要と供給の変動にも問題がある。スポーツ用品の市場は流行に左右されやすく、技術の進歩も早いため、短期間で新しいモデルやデザインが登場する。これにより、現在のモデルの価値がすぐに下がる可能性が高い。このような市場環境では、残価設定ローンのような長期的な価値を前提としたローンはリスクが大きいだろう。
消耗品であるロードバイクなどの競技用自転車に残価設定ローンを採用するのは、主流にはならないだろう。現在の殆どのロードバイクは、使い捨て前提の消耗品でしかなく、耐久消費財で有効な残価設定ローンでは使えない。
自転車で残価設定ローンを行うのなら、電動アシスト自転車で行った方が成功率は高い。こちらは、誰でも使いたくなるような多用途を持った性能、5年以上は持つ高い耐久性を持たすことができれば、残価設定ローンを行える可能性はある。特に、ファッション系の電動アシスト自転車は、高額なモデルでもファンがいるブランドがあり、このようなモデルならマーケティングやリセール市場を作れば、残価設定ローンが上手くいくのではないかと思う。