2023年4月1日にスタートした「自転車ヘルメットの着用努力義務化」が1年を迎えようとしている。この変化は、自転車売り場の光景にも顕著に表れており、ヘルメットコーナーが拡充され、着用の必要性を告知するポスターが目立つようになった。街を見渡すと、ヘルメットを着用している人々の姿が増えてきたことは確かだが、全ての自転車利用者が着用するには程遠い状況だ。
株式会社スコープのデータドリブンプロモーション本部(DDP本部)は、この1年間で自転車ヘルメット着用に対する生活者の意識と行動がどのように変化したのかを明らかにするため、2024年3月に「日々のお買い物で自転車を利用している」20代から70代の女性300人を対象に、ヘルメット着用の意識や実態、そしてお買い物への影響についてのアンケート調査を実施した。
調査の結果、自転車ヘルメットの着用努力義務化の認知は大きく増加していることが明らかになった。2023年2月には既に8割近くの人がこの制度を知っていたが、現在では9割を超える人々が認識しているという。詳細についても、理解している人の割合は2倍近くに増加した。
しかし、実際のヘルメット着用率は意向よりも低いままだ。2023年2月に「常に着用したい」と考えていた人は8%だったが、2024年3月時点で実際に常に着用している人は11%に留まっている。また、状況に応じて着用を考えている人は22.7%いたが、実際にそのようにしているのは11.7%だった。このようにヘルメット着用の重要性に対する意識は高まっているものの、実際の行動変化にはまだ距離があることがわかる。
自転車ヘルメットの努力義務化に対する意識は高まっているものの、それが実際の着用へと結びついているかは別の話のようだ。83.3%が事故防止のためにヘルメットの着用を支持しており、79.3%はこれを社会的責任だと感じているという。ですが、「努力義務」という言葉の裏で、着用しない人が多いと感じる人も同じくらいの割合でいる。
着用率が伸び悩む原因として、「ヘルメットを被った自分の姿」や「着用後の髪型の乱れ」が大きなハードルとなっているようだ。これに加え、他の人の着用状況に目を向ける人も多く、社会的な圧力を感じる人は63%にのぼる。さらに、ヘルメット選びに迷う人も半数以上おり、その持ち運びや盗難の心配が行動を阻害していることが窺える。
また、注目すべきは、生活者の2~3割が買い物行動を変更し、ネットスーパーや他の交通手段へシフトしていることだ。これは、安全意識の高まりや、逆にヘルメットを被りたくないという気持ちが買い物選択に直接影響を与えていることを表しているといえ、買い物スタイルの変化に対応した店舗の取り組みも必要と考えられる。
自転車ヘルメットの着用努力義務化から1年が経過する今、努力義務化への認知は9割を超え、詳細理解も倍増したが、着用率は常に着用している人で11%と低迷している。多くが緩やかな法規定の下で着用をためらっていることがわかる。
自転車ヘルメットの普及を進めるためには規則の強化が一番早いが、「86年ショック」と呼ばれた1986年の原付バイクのヘルメット義務化と同じように大きな反発は起こるだろう。ただ、8割以上の方が事故防止の点からもヘルメットの必要性は感じており、自身の命を守る重要なアイテムであることに変わりはない。商品の売り手や作り手側は改めて生活者の気持ちに沿ったヘルメットそのものの使いやすさの革新と、着用へのためらいを解消するための施策が必要なのではないだろうか。
今回の調査結果から、自転車ヘルメット着用努力義務化によって、生活者の意識には大きな変化が見られたものの、実際の着用行動にはまだ課題があることが明らかになった。安全意識の向上と共に、ヘルメット着用を阻害する要因を取り除き、生活者が自然とヘルメットを手に取るような環境づくりが求められている。メーカーや販売店、そして行政が連携し、自転車ヘルメットの普及促進に向けた取り組みを進めていくことが期待される。
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【追跡レポート】自転車ヘルメット着用努力義務化から1年。生活者の意識と行動の変化を徹底分析 | 株式会社スコープ (scope-inc.co.jp)