乗り物のデザインで重要と言えるのがフロントフェイス(顔)だろう。よくわかりやすいのが自動車で、多くの自動車ブランドは独自性を出すために、グリルやライトのデザインに統一性を持たせて、ブランドイメージを向上させるのが主流だ。
しかし、自転車の場合は、車体が細すぎてフロントフェイスを装着するわけにいかず、ブランドのバッジやカラーリングでブランドの個性を表現しているが、どうしても限界があるのが実情で、似たり寄ったりな形となってしまう。
そんな中、一部のE-Bikeでは、フロントフェイスを装備したモデルが登場している。今回は、注目のモデルを紹介しよう。
ゼッケンプレートで顔を作る「INTENSE TAZAR MX」
INTENSE TAZER MXシリーズはE-MTBでは珍しく、フロントにゼッケンプレートを標準装備している。一般的なマウンテンバイクの場合、ゼッケンプレートを装備すると、ゼッケンプレートに対して車体が細いため貧相に見えるという問題があるが、車体が太いE-Bikeの場合、ゼッケンプレートを装備しても違和感が少ない。欠点は、ゼッケンプレートでフロントフェイスを表現するのは簡単で真似されすいため、オリジナリティを重視するブランドには不向きだろう。
フロントバッジを活用した「FANTIC E-MTB XTFシリーズ」
FANTICの多くのE-MTBで採用されているのが、フロントに装備されているバッジを大きくして、左右に穴を開けてワイヤーを入れる方法。このスタイルはアクが無いのが特徴で、比較的トラディショナルなスタイルに入るだろう。
車体にライトを埋め込んだ「BESV CF1シリーズ」
BESVの街乗り向けE-Bike「CF1シリーズ」の一番の特徴が、フロントライトを車体に内蔵していること。フロントフェイスを装着する方法では一般的だが、コストがかかるのが欠点か。CF1シリーズのデザインは、近年の自動車やオートバイのような近未来的なデザインではなく、ヨーロッパ製のクラシックなモペッドやスクーターを連想させるデザインとなっている。
FANTIC ISSIMOシリーズ
E-Bikeにフロントフェイスを加える方法の中でも賢いのがFANTIC ISSIMO。ISSIMOはフロントライトを汎用性があるライトを使い、プラスチックのケースをはめ込む方式を採用。コストや整備性を重視しつつ、オリジナリティを実現した。
フロントグリルを装着し高級感と独自性を両立「HaiBike AllMtnシリーズ」
一部のハイエンドE-Bikeで見られるのが、ヘッドチューブにフロントグリルを採用したモデルが登場していること。従来の人力自転車ならフロントグリルは不要だが、E-Bikeの場合、バッテリーの冷却目的でフロントグリルを搭載しているのがある。近年の高級車で見られるダミーマフラーやダミーエアインテークがある中、E-Bikeのフロントグリルは穴が空いているため、自動車のダミーパーツよりは良いだろう。
HaiBikeの一部ハイエンドE-Bikeに採用されているフロントグリルは、BMWのキドニーグリルを連想させる縦穴タイプを採用し、HaiBikeの独自性を強調している。
車体とフロントフェイスを上手くデザインし、スーパーE-Bikeとして注目された「Bianchi e-SUVシリーズ」
数あるE-Bikeの中でも、デザイン性が非常に高いのがBianchi e-SUV。e-SUVはマウンテンバイクタイプのE-Bikeだが、他社のマウンテンバイクタイプのE-Bikeよりも注目されたのが、スタイリングだろう。
シャープな車体デザインに採用されたフロントフェイスは、モーターサイクルのカウルを連想させるスラントさせたヘッドチューブに、逆スラントスタイルのフロントライトを装備。さらに、ライト下にはBMW・GSシリーズやスズキ・V-STROAMシリーズを連想させるミニフェンダーを搭載。従来の自転車デザインとは大きく違い、自動車やオートバイのような独自性とデザイン性を実現した。
e-SUVシリーズの系統は、同じBianchiからE-OMNIAシリーズに継承された。ただ、E-OMNIAはモデルによっては顔を取ってつけたようなタイプもあるため、デザインのまとまり感はe-SUVの方が上だろう。
E-Bikeはフロントフェイスを装着するのが当たり前となるか?
自転車は自動車やオートバイと比較して、オリジナリティを出すスタイリングを作るのは難しい。それは、車体のサイズが小さいため独自性を出す形状を作るのが難しいためだ。しかしE-Bikeは、従来の人力自転車よりも車体サイズが大き炒め、デザインに独自性を出しやすく、モーターやバッテリーの冷却目的でフロントグリルやエアインテークを装着することができるようになった。
自動車やオートバイではブランドの独自性を出す目的でファミリーフェイスを装着するのが一般的だが、E-Bikeでもブランドの独自性を出すためにフロントフェイスを装着するのが流行する可能性はあるだろう。
文:松本健多朗