2021年5月15日、16日に横浜赤レンガ倉庫(横浜市中区新港1-1)で行われていた「ヨコハマサイクルスタイル2021」。ヤマハ発動機ブースでは、E-Bike「YPJシリーズ」と、電動アシスト自転車「PASシリーズ」が展示、試乗を行っていた。
今回、注目したいのはE-BikeのYPJシリーズではなく、電動アシスト自転車のPASシリーズだ。今回のベントで展示、試乗を行っていたPASシリーズは「スマートパワーアシスト」という機能が搭載されており、話のタネに乗ってみたら、予想外の走りの良さに驚いた。
筆者は、Yamaha YPJ-MT pro(記事)、Miyata ROADREX 6180(記事)、Corratec E-POWER SHAPE PT500(記事)、執筆時点では発売されておらずプロトタイプの「STROKE Cargo Trike T4」(記事)など、様々なE-Bikeを試乗しており、E-Bikeの所有に関しては、Specialized Turbo VADO SL 4.0(記事)を所有している。
多くのE-Bikeを試乗し、実際にE-Bikeを所有し、ドライブユニットの発する音で、内部ギアの素材を樹脂か金属かを判別する程度のE-Bikeマニアの筆者だが、実は一般的な電動アシスト自転車は、それほど興味を持っていなかった。それは電動アシスト自転車に搭載されているドライブユニットの特性が関係する。
一般的な電動アシスト自転車に搭載されているドライブユニットは2軸式と言うタイプ。2軸式はドライブユニットにギアが装着されており、そのギアが駆動してアシストを行う方法だ。ちなみにE-Bikeの主流である1軸式はクランク軸が回転しアシストを行う方法だ。
2軸式の利点は、コストを抑えながら最大トルクを上げることができる事。ヤマハ製の電動アシスト自転車に搭載されているドライブユニットのトルクは100Nmと、ドイツのBosch Performance Line CXの85Nm、同じくドイツのBrose S-Magの90Nm、STROKE CARGO TRIKE T4に搭載されている日本未発売48V電圧日本仕様E-Bike用ユニットの95Nmと比較して大きいトルクを出すことができる。
その一方で、トルクを重視したため最大出力は低くなっている。参考に、一般的な電動アシスト自転車やE-Bikeの定格出力は、「指定された条件下で機器類が安全に達成できる最大出力」で、モーターの力を常時維持できる出力だ。EUの電動アシスト自転車/E-Bikeの法律では、定格出力が最大250Wまで制限されている。また、定格出力は実際の出力(最大出力)を表しているわけではない。最大出力は、瞬間的に定格出力を越えて供給できる出力のこと。常時モーターの出力が出せるわけではないが、上り坂や加速時に高いケイデンスで漕ぐと最大出力に達する。そのため、電動アシスト自転車用ユニットよりも、オフロード走行を行う高価なマウンテンバイク用E-Bikeユニットのほうがパワーが出ている。
今までの電動アシスト自転車のドライブユニットは、トルクは強いので楽に走れるが、時速18キロ以上になると、パワーが無く、もっさりとしたイモみたいな走りが多いため興味をなくしてしまった。そのため、電動アシスト自転車を買うのなら、車体中心部にモーターを装着したミッドドライブで、E-Bikeタイプの1軸式が一番だと思っていた。
しかし、今回試乗した「スマートパワーアシスト」搭載のPASは、E-Bikeマニアの筆者ですら唸るほどの性能を持っていた。PASと言えば、もっさりしたイモみたいな走りというイメージだったが、「スマートパワーアシスト」搭載のPASは、最初のひと漕ぎからPASらしかぬスムーズなアシストを行い、時速18キロを超えても、綺麗に減退がかかり、いきなりペダリングが重くならないので軽やかに走る。試乗コースをスマートパワーアシスト搭載車のPAS BraceやPAS CITY-Xで走っているとき「これは本当に”PAS”(電動アシスト自転車)なのか?実はE-Bikeじゃないのか?」と一瞬思ったほどだ。
電動アシスト自転車はあくまでも街乗り用で、走りの良さは二の次という先入観があったため、スマートパワーアシストの性能に驚いた。今回は試乗コースという短いコースでの試乗だったが、スマートパワーアシスト搭載車をメーカーから借りて、公道で実力を検証する予定だ。
文:松本健多朗
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