2020年秋に長期インプレッション用として購入したSpecialized Turbo Vado SL 4.0(記事)。半日サイクリングメイン、たまにロングライドと乗っているうちに、執筆時点で走行距離は2600キロを超えた。
今まで、TREK Rail 9.7やCorratec E-POWER SHAPE PT500など、数々のE-Bikeを試乗していたが、Specialized Turbo Vado SL 4.0が初めて所有するE-Bikeだ。今回、E-Bikeを実際に購入し、半年間乗って感じた、買って良かったこと5選を紹介しよう。
向かい風が発生しても嫌に感じない
自転車で走る時の大敵の1つが向かい風。追い風なら速く走れるが、向かい風の場合、どれだけ景気良く走っても速度がガクンと落ちてしまう。向かい風は、坂道のように予測するのが難しく、突発的に発生するたこともあるため、到着予想時間が読みにくくなってしまう。
これが、E-Bikeの場合、向かい風が吹いていても、モーターパワーで進めるため風に対して鈍感になる。人力自転車なら向かい風で四苦八苦する場面でも、E-Bikeならバッテリーの消耗が少し減ると思うだけで済む。また、精神的な問題の解決だけでなく、向かい風でも速度が落ちにくくなるため、到着予定時刻の計算が行いやすいという実利的な利点もある。
上り坂があっても帰りたいと感じない
向かい風と同じく自転車の大敵であるのが上り坂。人力自転車の場合、低いギアにしてゆっくりと上ったり、筋力トレーニングを行う必要がある。低いギアにするとスピードが極端に落ちてしまい、上るのに時間がかかり、筋力トレーニングは誰でも随時できるわけではなく、途中で筋力が落ちてしまうこともある。
大手E-Bikeブランド(Shimano、Bosch、Specialized、Yamaha等)が搭載するモーターのアシストは、パワードスーツのように、自分の筋力が上がったかのようにアシストしてくれる。筋力が上がるとサイクリングでも心の余裕が生まれる。筆者は、人力自転車で様々な峠を越えるのを趣味にしていた。それでも、体調が悪い時や、面倒だと思った場合は何かしら理由をつけて走らないこともある。
E-Bikeに乗ってから、体が疲れていて面倒だと思う時でも、とりあえず走りに行くことが非常に多くなった。E-Bikeならアシストモードを強くして楽に走れば問題無い。E-Bikeでの峠越えは、修行ではなくサイクリングの感覚で走れるため、自由度が大幅に上がった。
天気予報が悪くても取り敢えず走りに行く
モーターアシストで移動の自由度があがると、坂道を躊躇せず走りに行くだけでなく、天気予報が悪くても取り敢えず走りに行くようになる。流石に走る前から雨が降っているときは走らないが、雨が少し降りそうな状況なら、とりあえず走りに行くことが増えた。
景色を見る時間が増えた
E-Bikeでのサイクリングは、人力自転車でサイクリングしている時よりも途中で立ち止まり、景色を楽しむことが増えるようになった。これは、上り坂でのスピードが速くなったのと、走行時間が予測できるようになったのが大きい。
人力自転車の場合、上り坂や向かい風での速度が大幅に上下するため、走行時間の予測が難しいが、E-Bikeだと上り坂や向かい風でも速度が落ちにくいため、自動車やオートバイのように走行時間の予測がしやすい。そのため、ちょっと止まって花を見たり、和菓子屋に入ってみることが多くなった。
ナイトライドも躊躇せず楽しむことができる
人力自転車の場合、自転車用ライトと言えば、バッテリーライトかダイナモライトを使うのが一般的。しかし、E-Bikeの場合、車体に大容量バッテリーを装備しているため、ヘッドライト、テールライトを装着することができる。
E-Bike用ライトが一般的なバッテリーライトと違うのは、電池切れに悩まされないのと、ライトが明るいこと。どんなバッテリーライトでも電池切れという不安があるが、E-Bikeの場合、車体のバッテリーを使うことで電池切れの不安や電池交換の煩わしさが解消された。ライトの明るさに関しても、E-Bike用ライトはバッテリータイプよりも明るいタイプが多い。
よほどの目的意識がない限りE-Bikeを選ぶのをお勧めする
筆者は自転車趣味を初めて15年以上経ち、ロングライドなどを行っていたが、Specialized Turbo Vado SLを購入してから、自動車やオートバイのようなドライブ感覚で、気軽にサイクリングや山越えに行くことになった。
2021年現在、スポーツ自転車を選ぶ際、レースや極限トレーニング、お金が無いなど、よほどの目的意識がない限り人力自転車ではなくE-Bikeを選ぶのをお勧めする。長くサイクリングを行っていた筆者ですら、E-Bikeを購入してから、サイクリングでは人力自転車は殆ど乗らない状況になった。
よほどの目的意識がない限り今から人力自転車を選んじゃいかん。低いグレードでもいいからEバイクの中から選ぶべき。すぐに自転車=Eバイクの時代になる。人力自転車は特殊なトレーニングマシン。
— trailermac (@trailermac) April 17, 2021
かつてのE-Bikeは、人力自転車と比較してハンドリングが劣っていたり、バッテリー容量が少ないなどの問題があったが、29インチホイールとBosch Performance Line CXで装甲車のようにトレイルを進む「TREK Rail 9.7」、物理の神様を超えようとするフルサスE-MTB「Yamaha YPJ-MT Pro」、アシストが切れても走ることができ、人力自転車感覚を残したE-Bike「Specialized Turbo Levo SL」「Specialized Turbo Creo SL」「Specialized Turbo Vado SL」の登場により機は熟した。初心者が高価なスポーツ自転車を購入する時は、ロードバイクやクロスバイクではなく、まずはE-Bikeから選ぶのをお勧めする。
文:松本健多朗
関連記事