2月28日、神奈川県横浜市にある「トレイルアドベンチャー・よこはま」のプレス向け体験会で、トレイルアドベンチャーよこはま所有のE-MTB(海外向けE-MTB)と、Bosch Performance Line CXを搭載したE-MTB(電動アシストMTB)に乗ることができた。今回はBosch Performance Line CX搭載したE-MTBに乗り、MTBコースでのPerformance Line CXの性能を確かめてみた。
Bosch Performance Line CXは欧州でeMTBという新しいカテゴリーを生み出し、爆発的なブームをリードし続けるドライブユニット。開発コンセプトは「Uphill flow(坂を駆け上がる楽しみ)」で、これを実現する為に専用開発されたドライブユニットは、マグネシウム材の使用と内部機構の新設計により25%の軽量化、48%の小型化を達成。最大トルクは75Nmで、前モデルよりもコンパクトなドライブユニットになったことで、フレームの設計自由度が広がり、最新のMTB用フレームのトレンドである「短いチェーンステイ長(ペダル軸からリアホイール軸間距離)」を達成した。
今回乗ったBosch Performance Line CX搭載E-MTBは、カーボンフレームのフルサスペンション29インチE-MTB「TREK Rail9.7」、アルミフレームの27.5インチハードテールE-MTB「Corratec E-POWER XVERT CX」、アルミフレームの29インチハードテールE-MTB「TREK Powerfly5」の3台に試乗した。
E-Bikeに新たな扉を開いた「eMTBモード」
Bosch Performance Line CXを搭載したE-MTBには、eMTB用途に特化したアシストモード「eMTBモード」を搭載している。eMTBモードではライダーの踏み込み力に応じた最適なアシスト力が瞬時に提供される機能で、狭い箇所でのターンや滑りやすい斜面を駆け上る等の技量を要する場面で、E-MTBで生じやすいライダーの予期せぬモーターアシスト挙動が排除されたモード。これにより、溢れるモーターパワーを意のままに操る異次元のライディング体験「Uphill flow」を提供するとのことだ。
このeMTBモードは、写真のような曲がりくねったタイトな道を走る時に役に立つ。例えば、外に膨らまずコーナーを走る場合、力強いアシストを行うPOWERモードで下手に漕ぐと外に膨らんでしまう。アシストが弱いTOURモードに変更すると、アシスト力が落ちてかったるい。外に膨らむのを怖がりつつPOWERモードで走ろうとすると、脚を止めないといけない場合があり人力MTBのほうが面白い事が多い。
これがeMTBモードだと、コーナーを曲がる時、外に膨らむと感じ脚にかかる力を無意識に落とすと、モーターが乗り手の思考を察知してくれるかのようにアシスト力を自然に下げてくれる。アシストの強弱も滑らかに行うため「人工筋肉」や「パワードスーツ」と言えるほどだ。このeMTBモードは、タイヤが滑ったらスリップを防止するトラクションコントロールとは違い、人間の微妙な漕ぎ方を判断してアシストを行うのだ。そのため、今回のトレイルアドベンチャーよこはまでの試乗会では、殆どeMTBモードのみで走行していた。
クルマやオートバイでは、電子制御があるとつまらないという風潮がある。しかし、E-Bikeに関しては逆で、Bosch Performance Line CXのeMTBモードのように、高度な電子制御が入っていないとE-Bikeは面白くならない。eMTBモードのように高度な電子制御を搭載するのは他の会社も追従するだろう。
驚いたのが、eMTBモードは特殊な機構やセンサーを採用しておらず”作り込み”で作られた機能で、広報担当者は「その気になれば他社メーカーでもできる」と語っていた。機械よりも遥かに繊細な力を出す人間の脚と、人間の力を察知して適切にアシストするモーターやセンサーの技術力に驚くしかなかった。
残念な事にPerformance Line CXのeMTBモードはE-MTB(電動アシストMTB)車にしか搭載されない。Performance Line CX搭載のE-クロスバイク(電動アシストクロスバイク)等の場合、eMTBモードの代わりにSPORTモードが追加されるため注意が必要だ。
E-MTBは舗装路からダート、上り坂、下り坂のすべてを楽しめる究極の公道用マウンテンバイク
今回Bosch Performance Line CXを搭載したE-MTBは、今までの人力自転車では不可能だった究極の公道用MTBが実現したと感じた。その理由は3つある。
1つ目が「eMTBモード」の搭載により、滑りやすい道や曲がりくねった道での運転がしやすくなった事。2つ目がバッテリー内蔵化により、重心位置が下がりコーナリングが自然になった事だ。少し前のE-Bikeと言えば、バッテリーを外付けしたタイプが一般的だった。このタイプはバッテリーが飛び出ているため見栄えが悪いだけでなく、重いバッテリーを高い位置に載せたため重心が高くなり、オフロードコースを楽しむレベルの筆者でも、車体が上手く倒れずねじ伏せながら曲がるような感覚だった。
今回試乗した、カーボンフレームのフルサスペンション29インチE-MTB「TREK Rail9.7」、アルミフレームの27.5インチハードテールE-MTB「Corratec E-POWER XVERT CX」、アルミフレームの29インチハードテールE-MTB「TREK Powerfly5」の3台は、脱着可能な内蔵バッテリーを搭載している。これにより、デザインがスリムになっただけでなく、重いバッテリーを低い位置に置くことができ、重心を下げることが可能になった。筆者がMTBコースを走行した限りでは、バッテリーの重さは体感できるが、カーブでも上手く車体が倒れるので慣れれば大丈夫というレベルだと感じた。
そして、3つ目がモーターの力により、従来のMTBではつまらない道も楽しく走行できる事。人力MTBが楽しい道と言えば平坦なダートと下り坂だが、E-MTBだとそれに加え、今までの人力MTBでは苦痛だった上りのダートや、舗装路の平坦、上り、下りまでが楽しく走ることができる。
そのため、海外ではE-MTBでサイクリングが楽しめるオプションが用意されている。例えばSCOTT STRIKE eRIDE(日本未発売海外仕様)というフルサスペンションE-MTBは、オプションでセンタースタンド、リアフェンダーとキャリア、フロントライト、追加バッテリーを用意している。
Boschの広報担当者によれは、ヨーロッパではフルサスE-MTBにキャリアやライト、追加バッテリーを装備してアルプスを越えるサイクリングを楽しむ層が多く、このような人に向けたオプションを用意していると語っていた。一般的なサイクリング+ダート/オフロードライドを楽しむ多くの人にとっては、本格的なオフロードライドから街乗りや長期休暇のサイクリングまで誰でも楽しめるE-MTBは、人力MTBを超えたと言っても良いだろう。
E-Bikeを購入する時、是非eMTBモードを備えたBosch Performance Line CX搭載E-Bikeの試乗をお勧めする。Bosch Performance Line CXを搭載したE-Bikeは高価で簡単に購入できるわけではないが、一度は体験しておくべきだ。
今回試乗したE-MTBのスペック
TREK Rail9.7
- フレーム:OCLV Mountain Carbon main frame & stays
- フロントフォーク:RockShox Yari RC, DebonAir spring, Motion Control RC damper, e-MTB optimized, tapered steerer, 44mm offset, Boost110, 15mm Maxle Stealth, 160mm travel
- 重量:21.83kg(M Size)
- ブレーキ:Shimano hydraulic disc, MT501 lever, MT520 4-piston caliper+Shimano RT76, 203mmローター
- ギア(前):SRAM X1 1000, 34T, 165mm
- ギア(後):SRAM PG-1230 Eagle, 11-50, 12 speed
- フロントホイール:Bontrager Line Comp 30, Tubeless Ready, 6-bolt, Boost110, 15mm thru axle
- リアホイール:Bontrager Line Comp 30, Tubeless Ready, 6-bolt, Shimano 8/9/10 freehub, Boost148, 12mm thru axle
- タイヤ:Bontrager XR5 Team Issue, Tubeless Ready, Inner Strength sidewall, aramid bead, 120 tpi, 29×2.60”
- ドライブユニット:Bosch Performance Line CX(定格出力250W、最大トルク75Nm)
- アシスト方式:ミッドドライブ
- バッテリー:36V 13.4Ah 500Wh
- 充電時間:約4.5時間
- アシストモード:4段階(ECO/TOUR/eMTB/POWER)
- 航続距離:140km/101km/99km/79km
リンク:trekbikes.com
TREK Powerfly5
- フレーム:Alpha Platinum Aluminum, Removable Integrated Battery (RIB), tapered head tube, Control Freak internal routing, Motor Armor, Boost148, 12mm thru axle
- フロントフォーク:RockShox Recon RL, Solo Air spring, Motion Control damper, e-MTB optimized, tapered steerer, 42mm(XSサイズは46mm) offset, Boost110, 15mm Maxle Stealth, 120mm travel
- 重量:-
- ブレーキ:Tektro HD-M275 hydraulic disc+Tektro, 203mm, 6-bolt
- ギア(前):SRAM X1 1000, 36T, 165mm
- ギア(後):SRAM PG-1230 Eagle, 11-50, 12 speed
- フロントホイール:Bontrager sealed bearing, alloy axle, 6-bolt, Boost110, 15mm thru axle+Bontrager Kovee, double-wall, Tubeless Ready, 32-hole, 23mm width, presta valve
- リアホイール:Bontrager alloy, sealed bearing, alloy axle, 6-bolt, Shimano 8/9/10 freehub, Boost148, 12mm thru axle+Bontrager Kovee, double-wall, Tubeless Ready, 32-hole, 23mm width, presta valve
- タイヤ:
Size: S、Bontrager XR3 Comp, wire bead, 30 tpi, 27.5×2.35”
Size: M , L , XL、Bontrager XR3 Comp, wire bead, 30 tpi, 29×2.30” - ドライブユニット:Bosch Performance Line CX(定格出力250W、最大トルク75Nm)
- アシスト方式:ミッドドライブ
- バッテリー:36V 13.4Ah 500Wh
- 充電時間:約4.5時間
- アシストモード:4段階(ECO/TOUR/eMTB/POWER)
- 航続距離:140km/101km/99km/79km
リンク:trekbikes.com
Corratec E-POWER X VERT CX
- フレーム: E-POWER SHADOW TUBE アルミ
- フロントフォーク:SR SUNTOUR XCR34-AIR-Boost LOR DS 27.5″、Travel:140mm
- 重量:-
- ブレーキ:SHIMANO BR-MT200 HYD DISC SM-RT30、180mm
- ギア(前):SAMOX GEN4、34T
- ギア(後):SHIMANO CS-HG50、11-36T、10S
- フロントホイール:JALCO PHL36 OS TUBELES READY 32H
- リアホイール:JALCO PHL36 OS TUBELES READY 32H
- タイヤ:WTB RANGER 27.5×2.8
- ドライブユニット:Bosch Performance Line CX(定格出力250W、最大トルク75Nm)
- アシスト方式:ミッドドライブ
- バッテリー:36V 13.4Ah 500Wh
- 充電時間:約4.5時間
- アシストモード:4段階(ECO/TOUR/eMTB/POWER)
- 航続距離:140km/101km/99km/79km
文:松本健多朗