衰退しつつあるオートバイ界から自転車やE-Bikeが学ぶことはあるか?

8月19日はバイクの日として、各地でオートバイに関するイベントが行われている。オートバイ業界は2020年までに国内販売台数100万台を掲げているが、ここ数年間の販売台数が30万台という現状では絶望的とも言えるだろう。

オートバイが売れない理由

オートバイが売れない理由を一言で上げるとするのなら「実用性」が無いからだ。例えば高校生が大型オートバイに乗れた70年代のバイクブームでは、大型オートバイで通学できた高校があったり、マスコミに原稿やフィルムを届けるプレスライダーが存在したため、大型オートバイは実用性も兼ねていた。

80年代バイクブームよりも超過激な1970年代の第1次バイクブームまとめ

 

当初はスズキのハスラー90を使って仕事をしたが、高速が使えなければ仕事にならないので、すぐに二輪免許を取った。今の大型二輪免許である。それを会社に伝えると、社有車を使えと言われた。バイクはホンダCB500FOURだった。「こんなデカイのに乗れるのか?」と不安が先に立った。この大きさとパワーがなけりゃ仕事にならないと先輩に諭され、結局、そのCB500FOURがボクの専用車になった。

社旗をはためかせ走るプレスライダー/バイク全盛期’80年代回想コラム・プレスライダー編から

その共同通信社で、今でいうバイク便のような連中が居りました。記者やカメラマンからの連絡で、写真フィルムや記事を現場で受け取って新聞社まで届けるプロの運び屋です。
その彼らのバイクの多くが、このCB500Fでした。新聞社の旗を着け、旭風防に新聞社のステッカーと通行証を貼ったバイクはなかなか精悍でかっこいいものでした。当時は各新聞社にありましたが今はどうでしょうか。
もちろん新聞社のバイクはCB500F以外もいろいろあったはずですが覚えているのはこのCB500FとゼッツーといわれたカワサキのZ750F(又は750RS)だけです。

http://www.kiwi-us.com/~geifuu/ClogCB500F01.htmから

今の物価にして新車価格120万円オーバーのCB500FOURや、同じ新車価格150万円を超える750RS/Z750FOURといった業務用に高価なオートバイ使う時代はこないだろう。

そんな風に実用性で使われることもあったオートバイだが、安全性が低い、購入時のコストと比べて効果が少なくコストパフォーマンスが悪いため、実用用途で使うユーザーが減少。125CCスクーターの販売台数は堅調だが、日本国内の殆どのオートバイメーカーは、オートバイ≒趣味の乗り物を売りにして販売している。

趣味の乗り物という危険性

オートバイ≒趣味の乗り物とアピールするのは危険な事でもある。趣味というのはあっても無くても良い物で、現代社会のように面白い物が沢山ある場合、高額な趣味は手を出しにくい。また、ふとした事でやめてしまう場合もある。そして、趣味用の乗り物でも趣味性だけでなく実用性も持っていないといけないのだ。

写真:photo-ac.com

良い例がサイドカーと乗馬だ。かつては乗用や商用、軍事用と幅広く使われたサイドカーは、4輪自動車の普及により一気に衰退。現在は趣味用の乗り物として、市販改造車が細々と販売する状態だ。乗馬も自動車が普及するまではサイドカーと同じく幅広く愛用されていたが、今では趣味用で細々とした状況だ。また、趣味性を追求しすぎると市場規模が一気に縮小し冷え切ってしまう問題もある。

オートバイは復活するか?

オートバイ業界は、様々な手を使う事で注目を集めようと躍起になっている。例えば2019年に行われた東京モーターサイクルショーは過去最高の入場者数と大成功とも言われている。しかし、実際のオートバイの販売台数は冷え切っており、モーターサイクルショーの活気がセールスに結びついていないという話もある。これは自動車でも言えており、チューニングカーイベント「東京オートサロン」でも同様で、販促にならない状況とのことだ。

参考:WeBike-入場者14万7,000人で過去最高を記録!「東京モーターサイクルショー」次の課題とは

参考:東洋経済ONLINE-オートサロン活況でも決定的に足りない要素

筆者はプロダクトを見る場合、大まかに4つのジャンルに分けて見ることにしている。

  • 安全性:その商品を使用した際の危険性はないか
  • 実用性:その商品を使わなければならない絶対的な理由はあるか
  • 社会性:社会に対して好意的な印象を与える力があるか
  • 新規参入性:誰でも参入でき、市場が活性化するか

これに該当していないと、今後の流れが大まかに予想することができる。オートバイに関しては、安全性は非常に低く、実用性もスクーターを除けばあまり高くない。社会性に関しても、第1次バイクブームで問題になり、第2次バイクブームで止めを刺したため、改善は難しい。新規参入も既存メーカーの力が非常に強いため、市場活性化は期待できないだろう。

趣味の乗り物は全部E-Bikeに流れてしまうか

趣味の自動車やオートバイは時代の流れにより、作ることが非常に難しい状況となっている。例えばスポーツカーは他社との共同開発や、乗用車ベースの物しかないのが実情だ。筆者は、自動車、オートバイ、自転車といった趣味の乗り物は、E-Bikeに流れてしまうのではないかと思っている。それはE-Bikeには安全性・実用性・社会性・新規参入性の全てが持っているからだ。

1つ目の安全性は、E-Bikeはペダルを踏んだ時にしかモーターアシストがかからないため、運転手の意思に反して暴走する事が無い。自動車やオートバイに関しては乗り手の意思に反して暴走する事例があり、どうしても危険性が高くなる。また、E-Bikeはモーターアシストは24km/hまで、アシスト比率は10km/h以下で1対2。10km/hから24km/hまでは1対2から0までの線形逓減と規定し、速度を下げることで誰でも乗れるようにすることで、安全性を向上させることに成功した。一部では、E-Bike/電動アシスト自転車のアシスト比やスピードを上げる論調があるが、筆者は反対だ。安易な規制緩和は第1次バイクブームのような事故の多発を引き起こし、レベルの低下と衰退を引き起こす危険があるからだ。

実用性(その商品を使わなければならない絶対的な理由はあるか)に関しても、E-Bikeはスポーツカーやオートバイよりも高い。クロスバイクタイプのE-Bike「E-クロスバイク」なら、荷台と泥除けを装着すれば、日常用途にも使用できる。また、従来の自転車よりも楽に移動できるため、体力がない人でも運転できるため、幅広いユーザーに使うことができる。社会性(社会に対して好意的な印象を与える力があるか)に関しても、自転車の発展型であるE-Bikeは強い。

最後に新規参入性(誰でも参入でき、市場が活性化するか)。E-Bikeは従来の自転車よりも法律による規制は厳しいが、自動車やオートバイよりも緩いため、参入は比較的行いやすい。日本では歴史が浅いE-Bikeだが、既に様々な企業が新しい発想のE-Bikeを打ち出している。特にE-カーゴトライクの「STROKE CARGO TRIKE T4」は、プロトタイプながら趣味性と実用性を高い次元で両立したE-Bikeとして注目されている。自動車とオートバイに関しては、機構が非常に複雑で、開発費が膨大になるのと様々な法規制がある。また、サービス体制の構築に関しての問題もあるため、中小企業の参入や挑戦的なプロダクトを作るのは難しいだろう。

自転車が自動車やオートバイから学ぶのは、安全性・実用性・社会性をいかに維持できるか

自転車が自動車やオートバイから学ぶのは、安全性・実用性・社会性をいかに維持できるかだろう。自動車やオートバイでは、既に安全性・実用性・社会性の3つが維持できなくなりつつあるため規制が厳しくなっている。そして、これらの規制はさらにいび敷くなるだろう。自転車に関しては規制が緩いのが現状だが安心できない。自動車を使わないで移動を行う「MaaS」の提唱は移動の考えを根本から覆す物で、「MaaS」が主流になったら自転車も安心できないだろう。

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編集

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